そのときは彼によろしく/市川 拓司
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いま、会いにゆきます 」の市川拓司さんの作品です。彼の作品は初めてでした。(「いま、会い」はビデオ借りてきて見ましたが。)何ともロマンティックな作品です。「世界の中心で、愛をさけぶ 」以来、日本も純愛小説ブームなのでしょうか?この作品も映画になりそうな話だな~と思いながら読んでいたら、6/2から本当に映画公開されてました。主人公の智史は山田孝之さん、雰囲気ぴったりのキャスティングです。ヒロインの花梨は長澤まさみさん、こちらは原作のイメージよりもうーんと普通っぽいですね。

内容については、特に奥が深いとか、凝ったひねりとかは全然なくて、漫画のように軽く読めます。ストーリーそのものも楽しめました。智史と花梨の恋愛(友情?)をメインに物語は進みます。14歳で初めて出会ってお互い初恋、ファーストキスの相手。しかし智史の転校で離れ離れに。そして、15年後の29歳で再会。しかし、そこではお互いの気持ちを確認するまでで終わり、その後花梨は長い眠りの世界、まさに夢の世界へと旅立ちます。そして、花梨の目覚めを信じて智史がひたすら待ち続ける。終に目覚めた花梨は智史に再び会いに行き、ようやく二人は結ばれます。その間、実に20年以上!お互いにたった一人の異性を思い続け、待ち続けるという、とても運命的でドラマティックなお話です。眠り姫を連想させるような童話的な設定も良いスパイスになってます。病気や事故などの衝撃的な事実で読者の涙を誘うより、ずっとセンスが良いと感じました。

ただ、実際のところ、トッコはヒジョーに現実主義なので、「20年以上も待ち続ける。」だとか、「物理学の教科書にも載ってない強い力で引き合う二人」などは、ありえないでしょーと思う部分も少なからずあるんです。女性に奥手で、あまりモテナイ、地味な性格の智史が、モデル並みの容姿(実際にモデルだった!)の花梨と恋におちるという設定も「なんで?」という感じ。あっ、でも、映画では智史役は山田孝之くんなんですよね。地味な性格でも山田くんのようにハンサムで少年っぽい可愛らしさを残した容姿なら、許せます。母性本能をくすぐられるというか、放っておけない気にさせるかも。そして、その手の男性がたまーに頼りがいのある行動をとったりすると、そのギャップが新鮮でまた良かったりするかもしれません。(作品中にも、中学時代に智史と花梨がススキガ原に毎晩通い続けた時、智史はそばで守ってくれた、と花梨は感動してました!)ただ、トッコの好みのタイプでないことは確かで、それがちと残念ですが。

トッコ的には主人公の智史よりも、智史お父さんがお気に入り。年とってからの子供だったので、既に80歳近いご高齢なのですが、好奇心旺盛でお元気です。息子に対する愛情を照れずに語れるところが素晴らしい!気持ちの素直さというのは、年齢ではないのかも。ひねくれ者のトッコには羨ましい性格です(;^_^A

それから、この作品で智史はアクアプランツを売るショップを経営しているのですが、市川氏ご自身のホームページにも自然の草木の写真がたくさんアップされてました。ご自身の部屋の中には水草の入った水槽もあるようですし、きっとアクアプランツがお好きなのでしょう。作中にはトッコの聞いたこともないような草の名前もたくさん出てきてかなりマニアックです。そして、この水草が水槽の中でゆらゆらしているイメージが、作品の雰囲気をうまく演出しています。登場人物たちは、智史も花梨も佑司も智史パパも皆現実感がなくて夢の世界をゆらゆらしているような人たちなので、水草の雰囲気とぴったりマッチするのですね。トッコも花や植物観賞は大好きなので、是非一度、照明の入った180センチのディスプレイ水槽を見てみたいです。想像しただけでもそこに引き込まれて、一気に夢の世界に飛べそうですね ☆☆☆