この4月まで産経新聞に連載されていた渡辺淳一作「あじさい日記」を読み終えました。トッコは産経読者ではないのですが、友人が産経をとっていて毎日小説を切り抜いて読ませてくれたんですね。感謝、感謝(≡^∇^≡) 渡辺氏の新聞連載ものはここ最近よく読んでいて、朝日連載の「幻覚 」、日経連載の「愛の流刑地 」、そして今回の「あじさい日記」と楽しませてもらいました。前作「愛の流刑地 」もネット上で色々激しい意見交換がなされていたようですが、「あじさい日記」も同様でした。渡辺氏のやや男性に都合よく描かれているな~と思われる女性キャラの描き方、少し時代錯誤的な夫婦観や男女観、そして何よりも不倫というインモラルなものをテーマに扱う点など、一部の女性読者には受け入れがたいものだったようで「あじさい日記」公式ブログ には批判のコメントが殺到(作品に対する批判から果ては産経新聞に対する批判に発展してものすごいことになってました。)、ブログ炎上、ついには、当初1年間の連載予定だったものが、予定を繰り上げて終了する破目になってしまいました。渡辺作品ファンのトッコとしてはちょっと残念でしたが、渡辺氏自身は、既に70歳を超えているとはいえ、まだまだ筆を休ませるつもりはないらしいので、是非次の作品に期待したいです。

 物語の粗筋は?というと、40代夫婦が主人公です。夫は医師で新宿にクリニックを経営。妻は専業主婦。子供二人。広尾在住で外車所有というセレブ夫婦。前半は、夫が自身のクリニックで働く事務員の若い女性と不倫、それを知った妻がやきもきする、嫉妬する、怒る、苦しむ様子が描かれており、後半は、夫に対する気持ちがやや吹っ切れ、自分自身に目が向いてきた妻が通い始めたカルチャーセンター講師の大学教授と不倫、逆に夫がやきもきする。果たしてこの夫婦の行く末は????というかんじです。

 前作の「愛ルケ」や「失楽園 」では、不倫の果ての究極の愛とは?という激しい不倫が描かれてましたが、「あじさい日記」の不倫はもう少し現実的な不倫、不倫というより浮気という表現の方が似合うようなかんじです。そして、渡辺氏お得意の官能表現は皆無です。不倫というよりむしろ、「夫婦の倦怠期をどう乗り切っていくか?」という夫婦関係をテーマにしていますね。実はトッコも結婚10年目に突入したんです。そろそろ倦怠期に入るのでしょうか?(既に入ってるんでしょうか?)倦怠期の乗り切り方は非常に興味あるテーマですよね。やはり人間というのは移り気なもの。何十年も同じ人だけを思い続けるというのは、ドラマや映画の世界ではあっても、現実ではなかなか難しいと思います。そんな時にステキな異性が目の前に現れたら?そして相手も自分を異性として好きになってくれたとしたら?不倫に発展しても不思議はない、むしろ自然のことだと思うんです。(ただ実際は、そのようなステキな機会に恵まれる事は残念ながらほとんどないわけで、大多数の人がそのまま日常生活に埋もれてしまうと思いますが、、、、、)だからトッコは、不倫や浮気ってそんなに悪いことと思わないんです。自分や夫がするかしないかは別として。世間一般の話として聞く分には、ステキなロマンティックな話だと思うし、めくじらたてて非難されるべきもの、著しく道徳に反するもの、とは思わない。ただ、配偶者にばれないようにするのは最低の礼儀。そこは10代、20代の若者じゃないのだから、節度を持ったお付き合い、自分を見失わないお付き合い(果たしてこれができるのか否か、疑問が残りますが。)が重要です。そういう意味でも不倫って神経をすり減らすし、気を遣うし、エネルギーいりますね。「あじさい日記」の妻志摩子は、前半は小うるさい、神経質な、ギスギスした女性のように描かれてましたが、果たして自分が不倫をする段になったら、上手に自分の気持ちをコントロールして、それなりに節度も守り、うまくやっていたと思います。

 昨今は非婚ブームで少子化が社会問題化しており、若者に覇気がないと言われてますが、そういう中で不倫をするぐらいのエネルギーを持った男性というのはとても貴重。渡辺氏は某テレビ番組の中で、「二兎じゃ足りない。四兎も五兎も追わなきゃ。」というような発言をしていたそうですが、それぐらいエネルギッシュで、野性的で、アグレッシブな男性が増えてくれれば世の中きっと変わるでしょう。女性の気持ちも靡くでしょう。世の男性諸氏!もっとエネルギッシュに!そして渡辺先生、更にエネルギッシュな恋愛を描いた次回作を!期待してます。