不機嫌な果実/林 真理子
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ホント、今さらというかんじですが、読んでみました。1996年の作品なんですね。ドラマは1997年。「夫以外の男とのセックスは、どうしてこんなに楽しいのだろうか」というキャッチコピーとともに、社会現象にまでなった作品です。テーマは不倫、、、かな?ストーリーは私がここに書くまでもなく、皆さんご存知と思います。1996年当時、私自身はまだ独身でしたので、その時に読んでもあまり面白くなかったかも。

感想は。。。。。うーーーん、、、、、何をどうまとめようかパソコンを目の前にした今でも悩んでます。ただ、確実に言えることは、主人公の麻也子は、ホントいけ好かない女だっていうこと。(ただ、これには、とりたてて美人でもなく、スタイルが良いわけでもなく、男性にもてたわけでもない、私のひがみ、妬みという感情がかなり入っていることを考慮に入れていただきたいですが。)だって、美人、スタイルよし、肌きれい、有名女子大卒、ハンサムでおしゃれで一流企業にお勤めのご主人、時々おいしい食事をともにできる男友達あり。これだけでも妬みの対象として十分な要素を備えているのに、そんな自分のおかれている現状に何となく不満を抱いていて、「やっぱり私が一番損をしている。」と考える。そして、結婚6年目の夫婦倦怠期に突入し、夫の自分に対する扱いがぞんざいになってきた頃不倫をしてみようかと思いつく。そして、いざ実行にうつすにあたり、計画を練るんです。(この辺りが私としては一番いけ好かない点ですね。)不倫をすると、どんな精神状態になるんだろうか?夫に対してどんな感情を持つのだろうか?そして、麻也子自身が一体どんな気持ちになるのだろうか?不倫経験のある友人たちから色々経験談を聞き出して下調べします。要は、自分が傷つかず、友人達からちょっと羨ましがられて優越感に浸れ、そして心ときめく楽しい時間を過ごしたい、という真に都合のよい不倫を望み、それを実行するために色々策を講じるんですね。とても要領の良い人です。そして、周囲の評価をとても気にします。一番滑稽だったのは、麻也子が夫と離婚して不倫相手の通彦と結婚しようとしている時。通彦は、音楽家ですからとても純情です。麻也子のご主人に「別れてくれ。」と詰め寄ってもよい、とまで言ってくれます。麻也子はこの言葉に感動を覚えながらも戸惑うんです。麻也子としては離婚原因が若い男との不倫の果て、などというのはカッコ悪すぎて許せない。夫婦仲がうまくいかず悩んでいた時に悩みを聞いてもらっているうちに親しくなり、離婚後しばらくして晴れて結婚することになった、というあくまでもナチュラルテイストの離婚・再婚ストーリーを自分の中で作り、後に友人達に聞かれた時は、実しやかにうっとりとこのストーリーを語ろうとします。可笑しいし、滑稽です。離婚という一大事、この期に及んでそんなくだらない体裁を気にするなんて。アホかお前は、と言いたいですね。

しかし、これほどまでにいけ好かない麻也子なのですが、実際のところ、これが人間の本音、女性の本音かもしれないな~とも思います。誰だって自分が一番大事、傷つきたくない、スマートでカッコいい人生を歩みたい、周りにもそう思われたい。当たり前の感情ですね。ただ、これが前面に強く出るか出ないかの差であって、そんなそぶりは見せないのに心では強く思っているケースだってありますね。林真理子さんは、ホントに人間の本音の部分を鋭くついてきますね。そして、散々麻也子に本音を語らせた挙句、ラストでは、再婚した麻也子は所謂本人が望むような幸せな生活ではないんです。要領のよかった麻也子の人生における大きな失策。しかも取り返しがつかない。この辺りは、林真理子さんの戦術というか、策略というか、意図的なものを感じますね。もちろん、そういうラストにしないと読者は納得しないだろう、という大前提がありますが。林真理子さんも意外と書きながら、主人公麻也子に嫉妬してたんじゃないかしら?

不倫、って私もちろん未経験なんですが、ちょっと興味もあってチャンスあれば経験してみたいな~なんて思う時もあるんです。ただ、現実の生活を考えると、男とのんびり会ってる時間なんてないから無理だな、と思うんですが。結婚生活は9年目に突入したので、夫は既に男性ではないし、単なる家族ですね。だから、麻也子のように夫とのセックスレスを不満に感じる感覚って、いまいちピンとこないんです。単に私が性に対して淡白なだけかしら?私の場合、夫が相手をしてくれないから不倫に走る、ではなく、目の前に素敵な男性が現れたから、が理想の不倫像かしら?そういえば、作家の小池真理子さんが以前「夫は家族だから恋愛の対象ではない。私たち夫婦は家庭内では恋愛はしない。恋愛はそれぞれ外に求めている。」というようなことをおっしゃっていましたが、カッコいいですね。私もその意見に大賛成です。あらあら、私ったら勝手にストーリーを作ったりして、麻也子のことを滑稽なんて言えないじゃない(;^_^A