昨年はノーベル文学賞受賞で世界の注目の的となったボブ・ディラン。ディランはコンスタントに新作を出していて、今年2017年も「トリプリケート」という3枚組のアルバムをリリースしている。内容はアメリカのスタンダード曲集。ディランがひたすら切々と歌う。ガラガラでときに調子が外れる声と歌いまわしのディランの個性は、スタンダードを歌うとなかなか際立ち、端的に言うと下手ウマで、聴き入ってしまう。そして名曲「ストーミー・ウェザー」も歌っていて、戦前ジャズ好き的には嬉しい。
「ストーミー・ウェザー」で自分が好きなのはこれ↓。
「ロニー・ジョンソンは私に一大飛躍の一つをもたらせてくれた。私はいつも彼には借りがあると思っている」とデューク・エリントンが称えるように、音楽的な高度さや革新性で言えば、ギタリスト・ロニー・ジョンソンのピークは間違いなく1920~30年代。白人ギタリスト・エディ・ラングとの超絶技術のデュオなどは、戦前ジャズの頂点のひとつであり、必聴音源である。
では、戦後の老年期のロニー・ジョンソンはどうか。ギターについては、若いときのあの高速で淀みなく弾く圧倒感は消えてしまいだいぶ物足りない。その代わりヴォーカルがめちゃくちゃ良くなっている。下記リンクの「ストーミー・ウェザー」をぜひ聴いて頂きたいのだが、声の出し方、震わせ方の技術が若いときよりもグンと上がって、感情表現の幅が広がり、実にドラマティックに歌い上げている。円熟味が増したというよりむしろ若々しくなってる感があって、戦前ジャズマンの基礎体力の高さを感じる。いずれにしても、年末にこれ聴くと染みますわ笑。ディランのも含めて100年ジャズのおすすめです!(後藤敏章)
