マチートのKENYA | 国立(くにたち)昭和大衆音楽同好会

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昭和(1926〜1989年)のジャズ、ブルース、ラテン、ロックなどの音楽を独断と偏見で紹介!

 

 先週、立川のディスクユニオンで買った中古CD。税込み400円ぐらいだったかと(助かります笑)。

 

 “KENYA”。1957年作品。ニューヨーク・マンボの最高峰マチート楽団と、アメリカ黒人ジャズの融合。ジャズ側からは当時のモダン精鋭キャノンボール・アダレイ(as)、戦前から活躍するジョー・ニューマン(tp)がソロ奏者として特にフューチャーされている。一聴すると「うわキャノンボールのソロ、きれまくってるじゃん」と耳が行くが、何度も聴いているうちに、マチート楽団の音楽監督マリオ・バウザ(キューバ出身)および作編曲者A.K.サリム(アメリカ)らによるガッチリしたアレンジのビッグバンド・サウンドそのものの精巧さと迫力に、心を奪われているということに気付く。

 

 ラテン音楽の熱狂に身を預けたいと思ったら、ぶっちゃけた話、この盤よりはマチート楽団の50年代マンボ音源を聴いた方がよい。キャノンボールやジャズマンのアドリブのスリルを味わいたいなら、この時期の数多のモダンジャズ名盤を聴いた方がよい。ではこの作品の醍醐味は何かといえば、ジャズとラテンのそれぞれのスタイルの違いと通ずるところを考え抜きながら、緊張感あるバランス感覚で、質の高いエンタメ作品として成り立たせるというところ。マチート楽団のパーカッションと分厚いホーンに心を煽られつつ、アメリカ黒人ジャズマンのソロにうーんと唸る、って音楽的には実はなかなかハードルが高い同居なのだろう、と。

 

 キャノンボールはほんと良いです(その数年前にマチートとやったパーカーよりも洗練されてる)。ジョー・ニューマンも頑張ってる。ただ個人的にソロ奏者で気になったのはDoc Cheathamというトランぺッターの音。ミュートもハイノートも自分の好み。調べたら1930年代のキャブ・キャロウェイ楽団でも吹いてたりしたアメリカ黒人ジャズマン。奥が深い。前述したマリオ・バウザもA.K.サリムも含めて、戦前ジャズからの流れはやはり無視してはいけないと再認識した。(後藤敏章)