さくさく読書日記-母


三浦綾子さんの「母」を読みました。
ずっと気になってたのに、読んだことがなかった本。
「蟹工船」で有名な、小林多喜二さんのお母様・タキさんについてのお話です。



明治の初め、東北の貧しい寒村に生まれたセキは、
13歳で小林家に嫁ぎ、6人の子宝に恵まれる。
長男は、その後「蟹工船」などの小説で有名になる、小林多喜二。
一家は父の兄を頼って小樽に移住し、パン屋を営む。
病弱の夫を支え、貧しくとも明るく、大らかに子供たちを育てたセキ。
しかし、そんな家族の幸せな生活は、多喜二の「蟹工船」が大きな評判になってから、
翳りがさす・・・。



私、恥ずかしながら、「蟹工船」って未読です。

なんか、暗い、陰気なイメージがあり、かつ、昔の小説はニガテ・・・という、

なかなか手が出ない条件がそろい踏みで、今まで手に取ったことすらない・・・。

でも、この本を読んで、そのイメージが変わりました。

小林多喜二さんは、本当は明るく、この上なく心優しい大らかな人だったそうです。

この本は、多喜二さんの母、セキさんの自らの生い立ちから、多喜二さんの死、その後の

人生までが口語体で書かれています。

方言もそのままなので、最初は読みにくいですが、次第に惹きこまれていきます。

何でも斜めに物事を見てしまう私は、「本当にこんな人がいたんだろうか?」と思ってしまうくらい、

はたまた、身びいきじゃないの?って思うくらい、セキさんは多喜二さんを褒めちぎります。

でも、きっと本当だったんだろうな・・・じゃなければ、みんなが幸せな暮らしをしなければ・・・なんてこと、

あの時代に考えてそれを発表することなんてないだろうし。

それゆえに、多喜二さんのむごい死に様は心打たれてしまいます。

タキさんは、幼い頃、近所に住む駐在さんにとてもよくしてもらったそうです。

そのイメージがあるから、警察はいつも弱いものの味方だと信じて疑わなかったそうですが、

多喜二さんの死によって、そんな思いも覆され、苦悩の日々を送ります。

そんなときに近藤さんという牧師さんと出会い、キリスト教の教えを受け、

救われていきます。

この本に登場する人々は、本当にこれでもかってくらい苦労して、これでもかってくらい

貧しいのに、それを卑屈に考えず、前向きに生きてる人ばかり。

こんな恵まれた時代に生き、ささいなことで不満を口にする自分が

本当に恥ずかしくなります。



三浦綾子さんは、最初、ダンナさんからこの作品を手がけてみないかと持ちかけられたとき、

躊躇したそうです。

でも、タキさんが受洗したという話を聞いて心が動いたそう。

三浦さんの本を読むと、本当にいい人しか出てこない・・・きっとそれは、

根底にキリスト教というものがあるからだと思うのですが、

なにかと心がささくれだちな私はいつもどの作品でも、読んだ後、

心が洗われたような気持ちになります。


「蟹工船」、今更ですがちょっと挑戦してみます。