久々の江国作品。
「せめてきんとした不倫妻になろう」という帯の言葉が気になる一冊。
社長夫人の美弥子さんは、まるで軍艦のような広い家で、夫・浩さんと二人で暮らしている。
家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。
あるとき、近所に住む大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんと交流を持つ。
ジョーンズさんは純粋な美弥子さんに心惹かれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに
出かけるようになる。
時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気付くとジョーンズさんのことばかり
考えている美弥子さんがそこにいた・・・。
久しぶりの江国作品。
前は新作が出るたびに読んでたのですが、なんか途中から初期のころの透明感がなくなって、
ちょっぴり俗っぽくなってしまったーなんて思ったりして、あまり読まなくなってしまってました。
今回は、なんとなく・・・貸本屋さんで読みたい本がなくて、いろいろ探してて目にとまった本。
たまには読んでみようかなー・・・帯の言葉にも惹かれたし・・・という軽い気持ちで借りてみました。
この本で気になったというか、お気に入りになったのは、擬態語。
例えば、健康そうに太った赤ん坊の表現を「はちはち肥った赤ん坊」としていたり、
さつま芋や、かぼちゃやゆで卵が好きではない理由が「もくもくした食べ物だから」としていたり。
さらには、あらゆるものがある、雑然とした実家の表現を「ごたごたしてる」としたり、
はたまた、玉砂利を踏む音を「ぱちぱちざくざく」としたり。
そんな表現、今まで見たことも聞いたこともないけれど、鮮やかに思い起こすことができて、
特に、さつま芋なんかの表現「もくもくした食べ物」って、すごくわかる!!ってうなづいてしまいました。
「はちはち肥った赤ん坊」なんて表現も、健康的で、すくすくと育っている赤ちゃんを自然と思い浮かべてしまいますよね。
ボキャブラリーが貧困な私は、ただただはうまいなーと感心しちゃいました。
物語は、とてもきちんとした主婦の美弥子さんが、
いつしか近所に住むアメリカ人のジョーンズさんに恋をしていまい、
それによって、それまでの世界観がガラリと変化し、「世界の外」に飛び出していくお話。
美弥子さんのきちんとした主婦っぷりにただただ感心しきり。
お掃除や庭木の手入れはもちろん、夕飯の献立もきちんとしていて、
そこだけはちょっと真似したくなってしまう・・・。
「きちんとしている自分」が好きだという美弥子さん。
本当に、どこまでも善良でステキな人なんだけど、もし友達にいたら疲れてしまいそうな女性でした。
私は、「きちんとしてる自分」は思い描けないくらい、きちんとしてないので・・・。
一方のジョーンズさんは、叙情的でロマンチストで女好き。まぁ、モテますよね、こういう男性は。
恐らく、「かゆいところに手が届く」系のきめこまやかなフォローが自然にできてしまう男性。
こういう男性も私はニガテですが・・・。
ジョーンズさんは、近所の、軍艦のような家に住む美弥子さんのことを、まるで「小鳥のよう」に
いとしく思っています。
でも、いろんな騒動を経て、いざ美弥子さんと一線を越えたとき、美弥子さんを「小鳥のよう」に
思うことはできなくなってしまいます。
ハッピーエンドなようで実はそうではないラスト。
文体もちょっとおとぎ話のような文体なんですが、そういうこと全てがラストをより引き立てます。
大人のおとぎ話・・・という感じでしょうか?
最後はちょっと残酷かなーなんて思ったり。
さらっとした文章なので、さらさらと読めてしまい、あっという間に読了してしまいました。
江国さんの世界は本当に独特だなーと感じつつ、やはり初期の作品のほうが好きだなーと
思ってしまったのでした。
