桐野夏生作品。
暗くてドロドロしてそう・・・と、挫折覚悟で読み始めました。
大正時代に東北地方に芸術家達が創ったユートピア「唯腕村(いわんむら)」。
1997年3月、村の後継者・東一は、美少女マヤと出会った。
父親は失踪、母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という
謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に住みつくことになる。
絶対挫折するかと思ってて、貸本屋さんでとりあえず上巻だけ借りたのですが、
あっという間に読んでしまいました。
相変わらず、自分勝手な人たちにムカムカイライラさせられたり、さまざまな欲にうんざりしたり、
本当に気分的には暗くなるような本なんですが、でも、さすが桐野さん。
どんどん読み進めてしまいました。
物語は、東北のとある場所にある、「唯腕村」という村が舞台。
武者小路実篤が創った「新しき村」というのがありますが、それと同じようなシステムの村です。
個人資産は持たず、農業で得た収益をみんなで分配して暮らす・・・というシステム。
この唯腕村、一応、教科書なんかにも載る、由緒正しい村なのですが、今や若者は、
創設者の直系の東一しかいません。
年寄りが増え、労働力も乏しくなるという悩みを抱えていた唯腕村に、新たな住民が加わります。
偽装家族の彼らは、「北」の国に絡む様々な事情を抱えた人々。
その家族の母親・スオンと、娘・マヤの美貌と魅力が元で、村は大きく動き始めます。
なにせ、狭い世界。ある村人いわく、「みんな歳とって枯れた顔してるけどさ。
相関図書いたら真っ黒」な状況。
そして、唯一の若者東一は、本当にあらゆる欲の塊のような男。
常に自分のことしか考えてなくて、とても自分勝手。もう、東一のパートを読むたびに、
イライラ、ムカムカが止まりませんでした。
一見、平和でのどかに見える村も、男女の思惑がいろいろ絡み合い、ものすごくドロドロな
人間関係が見えてきて、ぐったりしてしまいました。
上下巻、あっという間に読めましたが、読後感は本当にぐったりという感じ。
桐野さんは、閉ざされた環境での人間関係のドロドロ感を描かせたら、右に出るものなしという感じですね。
「東京島」もすごかったけど、こちらのほうがエグいです。
というわけで、最後もなんだか私的にはスッキリしない終わり方なんですが、
上下巻、ドロドロな話を読了した満足感が爽快という感じです。
桐野さんの本、「もう、おなかいっぱい」っていつも思うのに、新作が出るとついつい手に取ってしまいます。
