「言い寄る」に続く、田辺聖子さんの乃里子シリーズ第2作。
財閥の御曹司・剛と結婚して、神戸の海が一望できる、
高台のマンションで暮らす乃里子。
新婚ごっこのような結婚生活、誰もが羨む上流暮らし。
幸せいっぱいのはずなのに、乃里子はこの生活に違和感を抱き始める・・・。
すごく考えさせられる作品でした。
結婚って、私が語るのもおこがましいですが、好きだの惚れただのは、
最初だけで、結局、違う環境で育ってきた人と生活を共にするって、
けっこうなエネルギーがいるものだと思います。
「好き好き」ってときは、相手の短所も長所に見えちゃう。
なんか違う・・・って思っても、自分がそれに合わせれば済む話・・・なんて思えるものです。
でも、「好き好き」な時期が過ぎれば、そんな状況にも変化があるわけで・・・。
そして、二人を取り巻く家族や親族なども、重荷だったりする。
乃里子の場合、最初の何年かは、海の見えるステキなマンションで
(なんせ、結婚を決めたのは、このマンションからの眺めがよかったからってくらいですから。)、
気の合う剛との新婚ごっこのような結婚生活を送り、
欲しいものは、電話一本でデパートの外商が持って来る。
服も全てオーダーメード・・・庶民からすると、
うらやましいとしかいいようがないくらいの結婚生活を送ります。
剛も、読んでる限りは、かなりの「シットマン」ではありますが、
乃里子のことをすごく愛していて、大事にしている様子。
もう、他人から見たら、薔薇色の結婚生活を送ってるわけなんです。
でも、それもこれも、乃里子が相手にいろいろ合わせたり、彼の親族に対しての気遣いや、
そんなこんながいろいろあるからこそのものなんです。
でも、そんなこと、剛はわかってくれない・・・。
さらには、これからはもっと嫁としてのつとめをきちんとしろなんて言い出す始末・・・。
そして、ある日、ふとした話から、普段、乃里子が気に入って使っていた石鹸が、
実は1ケ3000円もするのだと剛から聞かされ、何かがさーっと冷めてしまいます。
この、石鹸云々のエピソードは、女性ならではの視点かも。ちょっとうなりました、私・・・。
その石鹸は、スミレの香りがして、貝の形をしている薄紫色のもの。
誰かのプレゼントでもらって以来、気に入ってしまい、
それからはデパートの外商に頼んで使い続けてたものです。
値段も気にせず、好きなだけ、使いたいだけ使ってきた石鹸。
でも、現実的な金額を聞いて、独身の頃は「金持ちなんて、ふんっ」っていう意識があって、
一人でがんばってた自分が、そっちの世界に染まってしまっていることに愕然としてしまうのです。
さらに、乃里子は、一人暮らしをしていた住居兼仕事場のマンションを、
結婚後もそのまま残しておくのですが、そこは、乃里子にとって聖域とも呼べる場所。
そこに剛が忍び込み、昔の日記を盗み読みしたことが発覚します。
許せない乃里子。剛が浮気したというウワサを聞いても、まったく腹も立たなかった彼女が、
自分の聖域を犯されたことにものすごい怒りを覚えます。
そんなこんなの事情が重なり、乃里子の中で何かがはじけ、
今の生活がだんだんと苦しくなってきます。
剛に対しても、優しくなれない。
それを乃里子は、「あんたへの優しさの玉は出尽くした」と表現します。
うーむ、これもうまいなーとまたしてもうなってしまいました。
第1作目「言い寄る」は、奔放な乃里子の独身生活を描いたものでしたが、
幸せなはずの結婚生活を描いたこちらは、なんだか、心にずどーんときました。
相変わらず、軽快な大阪弁で、すごく読みやすいんですけど。
あぁ、なんで今頃になってこの作品に出会ったんだろう・・・。
本当に、もっと早くに読みたかった!!!
