宮部みゆきさんの3年ぶりの書き下ろしエンターテイメント作品。
驚くほど分厚い本で(700ページ!!)、若干読みにくかったですが、
内容はじーん・・・と、心に響くものでした。
高校1年生の花菱英一の両親は、結婚20周年を期に、
念願のマイホームを購入する。
新居は、下町の寂れた商店街に取り残された「小暮写真館」という、
古い店舗兼住居。
風変わりな英一の両親は、店舗や写真館の看板をそのまま残し、
家の中だけをリフォームする。
そんな両親に若干違和感を感じつつも、英一の新生活はスタートするが、
英一たちの前にこの家に住んでいたおじいさんの幽霊が出るというウワサが立ったり、
心霊写真が持ち込まれて、英一がその写真について調査をするハメになったりと、
何かといろんな騒動に巻き込まれる・・・。
あらすじ、うまく書けません・・・。
この本、4つのお話が収められているのですが、それぞれいろいろ考えさせられるお話でした。
特に、最後の「鉄路の春」というお話は、それまでのお話で丁寧に人となりが描かれてきた登場人物の、
辛い思いや、切ない思いを描いていて、ホロリときてしまいました。
最初読み始めたときは、心霊写真が登場したりして、ちょっと失敗???って思いつつ、
でも、宮部さんは超能力のお話なんかも面白かったりするので、「きっと面白いはず」と決め付けて、
読み進めてみました。実際、心霊写真が主体のお話ではないので、全然問題なかったんですが・・・。
特に大きな事件が起きるとか、そういうこともなく、普通の家族や友人の日常が描かれていて、
起伏に富んだストーリー展開ではないですが、そこはさすが宮部さん。
登場人物の描写の深さや丁寧さ、さらに、軽妙なタッチでぐいぐい読ませてくれます。
周囲の人間の背景や人となりもすごくきちんと描かれているので、登場人物が多くても、
ごちゃごちゃにならずに読めます。
「鉄路の春」は、一見、幸せいっぱいに思えた花菱家の誰もが見て見ぬフリをしてきた悲しい過去が
浮き彫りになります。さらに、英一が密かに想いを寄せている、垣本順子さんの過去も・・・。
家族の崩壊と再生・・・みたいなテーマになっていて、特に、英一の弟・ピカちゃんが抱えていた思いを
読んだとき、涙が出ました。切ないお話でした。
でも、最後は爽快な後味が残ります。
英一にとってはホロ苦い思いが残りますが、でも、読者は「がんばれ、英一!!」って声援を送りたくなる
感じ。
全てを読んでから、表紙の写真の意味がわかり、それまたなんか、爽快な気分です。
じーん・・・とするものの、なんか、後味すごくいい・・・さすが宮部さんです。
最初は700ページの厚さにちょっと圧倒されたものの、読み始めたら、あっという間でした。
この厚さだから、文庫化したら上下巻になるのかなー・・・。
ハラハラするような展開はないけれど、何気ない日常の出来事をここまで読ませてしまう宮部さんは、
本当にすごい作家さんだ・・・と改めて思った一作でした。
