さくさく読書日記-小さいおうち

本屋さんで見て、表紙のかわいさが気になってた本。
でも、表紙から想像する内容は、メルヘンチックなものだと思っていたので、
読むことはないだろうなー・・・と思っていたところ、貸本屋さんにあって、
すすめられたので読んでみることに。
直木賞受賞作ですって。この作家さんの本、初挑戦です。


長年、女中としていろんな家に奉公していたタキ。
その中で一番思い出に残っているのは、若く美しい時子奥様とそのご家族。
女中という職業に誇りを持ち続けてきたタキは、晩年、その思い出を、
大学ノートにつづり始める。
戦前・戦中の東京を舞台に、当時のモダンな風物や、戦争に向かう世相を背景にしつつも、
穏やかに続く家庭生活。その裏に秘められた時子奥様の切ない恋。
そして、物語は意外な展開で現代へと継がれていく・・・。


今年はなんだか戦争関係の本やドラマをたくさん読んだり見たりしましたが、
この本が一番穏やかでした。
当時の市民の生活の様子が描かれていて、それは、向田邦子さんのエッセイにも
あるように、戦争の影が色濃く迫っているけれど、日々の生活はそれなりに楽しいものだったという・・・。
主人公タキが長年仕えた時子奥様は、美しく、おしゃれでモダンな方だったということで、
身につけているものや、訪れる場所の描写もとてもステキでした。
豊かで便利になった今の時代よりも、当時のほうが、わりと(今から見ると逆に)贅沢だったんじゃないかと思います。家の造りにしてもそうだし、洋服や着物にしてもそうだし。
娯楽にしても・・・。
戦前、戦中というと、貧しくて、食べ物がなくて、みんながみんなとても苦しい生活を強いられたというイメージが強いですが、いろんなことを工夫することで、生活の端々がちょっぴり華やかになる・・・ということがこの本には書かれています。なので、空襲の話が出ても、悲惨さは感じない・・・。
タキさんの家事の仕方を読んでいると、沢村貞子さんのエッセイを思い起こしてしまいます。
昔の人は、電化製品などに頼らず、生活の知恵を大事にしてたんだなー・・・と。
最終章までは、始終、穏やかに語られる日々の生活が面白くて、読み進めてしまいました。

・・・が、最終章。ガラリと印象が変わったかと思いきや、語り部は甥の次男になり、
時代も現代へ。この章で新たな真実に衝撃を受けてしまいます。
穏やかに語られていたタキさんの思い出話の中には、ラストに繋がる様々な伏線が張られていたことに、ここまでまったく気付かず・・・。
思わず最初から読み返してしまいたくなりました。(読んでしまいましたが。)
なるほど納得の直木賞受賞といったところ。
そして、時子奥様をめぐる男女織り交ぜた人間関係など、「あー、そういうことだったんだー」と、
最後の最後に納得します。
うまいです、この作家さん。

他の本も調べてみたら面白そうなので、いくつか読んでみたいです。