さくさく読書日記-右岸


こちら、辻さんバージョン。
祖父江九という、「左岸」の主人公茉莉の隣に住む
幼馴染の視点から描かれています。

やくざの父と母・祖父江七の間に生まれた祖父江九。
父は生まれてすぐに刑務所に入ることになり、
実際は母親と二人暮しとなるが、その母も生活のために
夜の仕事を始めたことで、祖父母の住む、九の通う小学校の
用務員室で暮らすことになる。
・・・が、そこでの生活に慣れた頃、兄とも師とも慕っていた、
幼馴染で茉莉の兄である惣一郎の遺体を発見してしまう・・・。

こちらのお話は、祖父江九が主人公。
「左岸」にもたびたび登場します。
九は茉莉と違って、生い立ちが少々複雑で、物心ついたときには
父親は死んだと言い聞かされて育ちます。
・・・が、茉莉の父・新や、兄・惣一郎に囲まれて、
そこに真の家族を見出そうとします。
・・・なんか、そんなところがとても切ない。
そんな九は、スプーンを曲げられるという特殊な能力を
身につけてしまうのですが、その力が年とともにぐんぐん発達します。
生きにくさを感じた九は、ある日突然放浪の旅に出るのですが、
たどり着いたパリで運命の女性ネネと出会います。
ネネと愛し合い、子供も生まれ、今度こそ幸せな家族を持とうと
するのですが、不慮の事故でネネを失い、そのどさくさで子供が行方不明、
さらに九自身も事故に巻き込まれ、記憶喪失になります。
なんか、本当にどこまでもついてない人生・・・。
そんな九は、幼い頃からずーっと茉莉を想い続けます。
本当に、切なくて息苦しくなるくらい、茉莉のことが好きで好きで・・・。

「左岸」では茉莉の奔放だけど「超然」とした生き方をとてもステキだと思いました。
「右岸」では、九の不幸な運命に本当に切なくなりました。
不幸さをさらに倍増させるべく、九の不思議な力が重要な鍵になることに
ちょっと違和感を感じましたが・・・。
元々、超能力とかそういうことに対してあんまり信じることができないタチなので・・・。
でも、それを差し引いても面白かったです。
九が放浪の旅先から時々茉莉に手紙を出すのですが、
その中の手紙で、


「人生と人生の間には川がある。
僕がつねにこっち側で生きているように、
そして茉莉ちゃんがそっち側で生きているように、
ぼくたちはお互いの人生を見ることができないよね。
人間の数だけ岸辺があるんだと思う。
だからぼくはいつも岸辺に立って、
あなたや、会えない家族、友人らのことを思うのです。」

というものがあり、これがなんだかとても印象に残りました。
切なさが凝縮されてるというか・・・。

「左岸」は、同じ女性として共感する部分も多々あり、すんなり感情移入できましたが、
こちらはそうはいかなかったのですが、久しぶりに「切ない」と心から思う本でした。
「左岸」から読んで正解だったかも・・・。
うまくまとめられなくてすみません・・・。
でも、後味は悪くないです。