さくさく読書日記-オリンピックの身代金

奥田英朗さんといえば、「イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」というイメージが

強いですが、実はサスペンス的な作品も面白いんです。

「邪魔」や「最悪」など。

この作品、昭和39年、東京オリンピックに沸く東京を舞台にした、

3年ぶりの長編、しかもサスペンスってことで、貸本屋さんで見つけて

即借りてしまいました。


昭和39年夏。オリンピック開催に向けて、大都市に変化しようとしている

東京。

国民は誰もがこのオリンピックの成功を望んでいる。

そんな気運が高まる中、「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が、

警察に送りつけられる。

あってはならないオリンピック開催にかんする不祥事。

警察は極秘裏に捜査を進める。

そして、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ・・・。


この本、けっこうな厚さで、しかもかなりの字数。

そして、登場人物が多い。

でも、そんなの気にならないほど面白くて、次、どうなるんだろう?と、

読み進まずにはいられません。いやぁ、面白かった!!!

東大の大学院生の島崎。彼は、東北の過疎の農村に生まれ育った

次男坊で、たまたま勉強ができたからという理由で東大に進学し、

大学院にまで通ってマルクス経済学を学んでいる。

東京に出稼ぎに来ていた兄がヒロポンの過剰摂取により死亡したことや、

貧しい故郷をあとに自分だけ東京で勉強していることを負い目に感じ、

自らに激しい肉体労働を課していく。

寡黙で優秀な学生だった島崎が、この肉体労働をすることにより、

資本主義の矛盾を見出し、テロリストへと変貌していくことが丁寧に

書かれています。

また、彼を追う刑事たちの姿や、島崎に関わる肉体労働者などなど、

登場人物に関してかなり丁寧に書かれているので、飽きることなく

読めますし、また、誰が誰なのかわからなくなってしまうということも

ありませんでした。

一言で言うと、「濃い本」といったところ。

そして、オリンピック開催に向けて、焼け野原だった東京がどんどん

大都会へ変貌していく様も、その裏側にいろんな人の苦労があったことも

一緒に詳しく書かれています。


島崎の視点で当時の東京の変貌っぷりが描かれているので、

よくTVなんかで見る昔の映像なんかの華やかなオリンピックの舞台裏で、

弱者の生活(オリンピックのための施設を作る肉体労働者など)が、

どれほど過酷なものだったのかというのもリアルにわかります。

私は、昭和30年代を舞台にした本や映画はとても好きですが、

ここまで裏のことを書いた作品て珍しいかも。

うちのすぐそばを通っている首都高ができるのに、いろんな人が命を

落としたり、とても過酷な労働が要されたんだなーと考えてしまいました。

相当綿密な取材をして書かれたんだろうな・・・という本です。


それにしても、オリンピックに興味がなくなったのはいつからだろう?

今年の北京オリンピックも私的にはそんなに盛り上がらなかったし・・・。

国民全体がこんなに熱狂した東京オリンピック・・・その盛り上がりはすごかったんだろうなー。


最近読んだ本の中でとても印象に残る本でした。