「通天閣」を読みたかったんですが、図書館に「さくら」があったので、
先にこちらを読んでみました。
この本もいいよ・・・と、同僚MとKに聞いてたので・・・。
物語は、長谷川家が舞台。
語り手の「僕」こと次男の薫、カッコよくてヒーローだったお兄ちゃん、
暴力的で美しい妹、優しく美しい母、朗らかな父・・・そして、
タイトルにもなっている、犬のさくら。
この平凡だけれど幸せな家族の成り立ちと、崩壊、再生の物語。
前半は、妹誕生や、幼い頃の思い出などを中心に、薫の回想シーンが
ほとんどです。本当に幸せだったとき・・・。
カッコいい兄と美しい妹にはさまれて、全体的に平凡といった薫の視点から、
家族が一番幸せだったときの、何気ない日常の出来事が語られてます。
それはそれはほほえましい・・・。
・・・が、不幸は突然起こります。冒頭の部分で、お父さんが家出していて、
お兄ちゃんは亡くなっている・・・っていうのがさくっと書かれてるので、
後半は重くなるんだろうな・・・とは予想してましたが・・・。
交通事故にあって、奇跡的に一命をとりとめたお兄ちゃん。
でも、下半身不随に顔も変形・・・自分が幼い頃、
ちょっと変わった外見の人をキモ試し的に勝手に遊び相手にしていたお兄ちゃん。
それは、子供の頃、誰にも経験があるような、悪気のない(からこそタチの悪い)差別。
自分がそっちの側へいくとは夢にも思ってなく、子供たちが自分を見る目に
かなり衝撃を受けます。
体の自由がきかないのと、屈辱的な周りの視線に耐えられず、
「ギブアップ」という言葉を残して自殺してしまいます。
その後の長谷川家は、お父さんが家を出て、美しかったお母さんは
太ってしまい、薫も家を出て、妹は報われない恋に縛られている・・・。
あんなに幸せだった家族に、こんな崩壊が起こるなんて・・・。
幸せだったからこそ、不幸が訪れたとき、その落差にみんなついていけなく
なっちゃうんでしょうね。
でも、常に、どんなときも、そんな家族の心の支え(というか癒し)になるのが、
犬のさくらなのです。
動物がニガテな私・・・でも、この本を読んで、犬を飼うのも悪くないかも・・・って
思いました。
実は最初は、犬が軸になる小説って聞いてたので、あまり気がすすまなかったんですが・・・。
長谷川家は、関西のとある新興住宅地に住んでる・・・という設定なので、
物語の会話は、ほとんどが関西弁でなされています。
この本を読んで、関西弁のすごさを感じました。
これ、全部標準語での会話だったら、また違った小説になってしまう気がします。
関西弁だからこそのよさがとても出てる気がしました・・・うまく説明できないけど・・・。
お兄ちゃんが自殺しちゃう切ない場面でちょっと涙が出ちゃいましたが、
前半の家族の幸せな描写はとてもほほえましく、心がほわっとなる感じ。
自分が子供の頃を思い出しながら読んじゃいました。
後半は、悲しいのと、家族の再生により、なんだかこちらも元気になる、
後味はいいと思います。
特に、お母さんが妹へ、どうして子供たちが生まれてきたのか・・・という、
ある意味性教育的な話をする場面がありますが、このときのお母さんの
話しは、とてもいいです!!こういう表現で神秘的な赤ちゃんの誕生について
語れるお母さんってステキ!!って思ってしまいました。
さぁ、次は「通天閣」を読みます!!!西加奈子さん、私の中では
とても当たりな新規の作家さんです。
「さくら」の公式HP:http://www.shogakukan.co.jp/sakura/