この本の第一刷は本年4月であり、株式市場が2月の急落から回復し、市場に楽観論が蔓延し始めた時期に出版されました。

著者は、蔓延し始めた楽観論を様々な角度から戒め、金融危機の再来の可能性を指摘しており、その後の株価の推移を見る限り、金融危機までにはなっていないが、その指摘は当たっている。

ただ、この本の一番言いたいことは、もっと長期的で構造的な日本の危機的状況であり、その論拠は極めて具体的で説得力に富んでいます。

要は、人口減少、社会保険負担の増大、AIやロボットによる失業者の増加、アメリカで起きているアマゾンによりトイザラスやシアーズ、スポーツオーソリティの倒産の様な所謂アマゾンショック、日本の基幹産業である自動車産業における電気自動車への移行による部品産業への影響など、日本はまさに内憂外患の状況に直面しているというのだ。

一つの光明としてコマツの例が紹介されている。

コマツは一度は本社機能を発祥の地石川県小松市から東京に移したが、それを小松市に戻し、生産も一度は大阪などに移したが小松市に戻した。

その結果、女子社員の結婚率が上昇し、一人当りの子供の数も増えたそうだ。また、従業員の生活も豊かになり、退職者の健康寿命も延びたという効果もあったらしい。

この本の目的は、あくまで危機的状況を知らせることであり、その対策的な提言はほとんど無いに等しい。(そんな簡単に解決策があるなら誰も苦労はしないよね。)

日本の置かれている危機的状況を知るには、この本は一番のお勧めです。