神格化されてしまったヒーロー/ヒロインというのは、
通例、実体通りに評価されるものではない。
やはり、バイアスがかかる。実体よりも数倍も増幅されてしまう。
たとえば、石原裕次郎。
果たして演技はうまいのか?シンガーとしての力量は?
映画俳優としての自己管理能力は?
「?」=疑問符がいろいろ付く。
演技の勉強をしたこともない。歌の習練をしたこともない。
スターとしてのファッションセンス、アクションをするための肉体鍛錬や歯列矯正。
いずれもかなりテキトーに、ほとんど気にかけることもなくやり過ごしてきたような人だ。
で、そういうことを指摘すると、「キミは何を言っているのかね、世紀の大スターに!」、
というお叱りを受けかねない。「太陽に吠えろ」のファッションセンスの一欠片もないスーツ、
不摂生がたたった大病、スターにあってはならない劣悪な歯並び、そして深みのない演技。
冷静に観れば誰でもわかるはずなのに、それらすべてが否定されてしまう。
確かにデビュー2~3作のインパクトは強烈であったが、役者としての実体は凡庸で、
むしろ生来のキャラクターだけで人々を魅了したに過ぎない。
一度神格化され、幸運にも昇りつめてしまうと、どんなチカラをもってしても
梯子を降ろすことは容易ではない。
ただし、役者ではなく人間として見た場合、傑出していることは間違いない。