オジサンにはお馴染みの「LEVI'S 646-0217」というジーンズ。
70年に発売され、一頃はかなり流行した。
スタイルはベルボトムと呼んだ、裾がフレアーしたパターンを採用しており、
LEVI'S社のオリジナル・カットである。このモデルのポイントは、
70年以降に登場するオレンジラベル(レーベル)になったことだ。
すなわち、工数の少ない効率的な仕様を前提とし、近代化された量産ラインで生産される
ファッションアイテムとしてのカテゴリー商品を指していた。
オレンジラベル以前は、レッドラベルとホワイトラベルがLEVI'Sの主力カテゴリーで、
前者は作業着(ワークウエア)で、後者はカジュアルウエアを担っていた。
これらのカテゴリーに追加されるカタチで投入されたオレンジラベルは、
爆発的に拡大したジーンズの流行に対応するためのもので、
作業着としての機能性や耐久性よりも、ファッション性とコスト(つまり利益)が最優先された。
だから、デニムは染色工程を省略し、耳のない広幅の量産織機で織られたものを選定し、
縫製工程もサイドシームをロックするなど、効率化を徹底している。
定番のジーンズに比べ、その省コスト効果は膨大な利益をLEVI'S社にもたらしたに違いない。
その上、オレンジラベルは70年代を通じて売れに売れた。
そこで、もっともっとという欲が出る。しかし、それはアメリカの他の製造業が
揃って犯した過ちへ邁進する。コスト重視、品質軽視の発想だ。
おかげで、オレンジラベルは80年代に入るともう目も当てられない商品になっていた。
2~3回選択するだけで薄いブルーに退色し、肌触りも非常に柔らかく、ジーンズというよりも
量販店のワゴンに山積みされるカジュアルパンツのような品質だ。
LVC(リーバイス・ヴィンテージ・クロージング)が復刻した写真の646-0217は
70年代初期のものに忠実だ。よくできていると思う。しかし、元となる商品が
コスト効率重視の産物であるから、やはり限界はある。
「LEVI'S」と大文字(キャピタル)で表記されているタブを持つモデルは、
防縮プロセスを施す505用に開発された0217番のデニムを使い、
「Levi's」と小文字で表記される71年までの間だに生産されていたはずだ。
だから、セルビッチ(耳)はないが、脇のインサイドシームをロックしない
脇割りという縫製を採用していた。
写真の商品は、「LEVI'S」と大文字で表記されていながら、
インサイドシームがロックされている71年以降のモデルをベースにしている。
デニムも、71年以降の染色の工程数が少なく、均質な織りのものを再現している。
・・・とかなんとか馬鹿マニアのような話をしたが、まあ、総じて良くできていることは間違いない。
サイズはW29~W34インチで、値段は2万円前後。MADE IN USA。昔、ミュージシャンや
サーファー気取りだったオジサンには懐かしいアイテム。ただし、メタボには穿けない、似合わない。