僕はコンビニバイトなのだけど、来店するお客様の中にはサービス外のことを頼んでくる人がいる。中でも多いのはスマートフォンに関する問い合わせだ。大抵の場合は簡単に解決できるものだし、解決に尽力することにしている。

だがある日の来客はなかなか難しい問題を抱えていた。


「出会い系のアプリに課金したいんだけどどうしたらいい?」


うーん。


うーん。である。


うーん。

まぁ一旦おずおずと画面を覗いてみる。

チャット欄が「ピコピコピコピコピコピコ!」

とんでもないサクラ祭りある。春ですね。


「危ないアプリみたいなので課金はやめた方がいいと思いますよ。あっ、いや僕は知らないんですけど。えっちなこととか全然知らないんですけど。」


このような問題には流石に尽力できない。 


しかし、これは詐欺を未然に防いだとも言える。

「オレオレ詐欺に引っかかってるおばあちゃん」を助けたら表彰されるのに、「危ないアプリに課金しようとしたオッサン」を助けても表彰されないのは何故だろうか。


で、だ。このオッサン(仮にOさんと呼ぼう)はすっ

ごいのだ。引き下がらないのだ。


何度も止めた。「それでも!!」

うーん。「それでもぉ!!」


それでもってなんだろうか。

危ないアプリだと分かっているけれど、詐欺だと分かっているけれど、それでも。

それでもってなんだろうか。



うーん。もういっか。

「分かりました。では、クレジットカードが必要みたいなので、登録してください」 


せめてどうか見えないところで、お幸せに。

ありがとうございました。



しかし事はそう容易く終わらない。

「クレジットカードの登録がさぁ!できないんだけど!」


どっちだろうか。

やろうとしたけどできないのか、やり方すら分からないのか。

せめて前者であってほしい。


はぁはぁ、画面を見ますね。


えっと…。


後者だった。


僕は彼のクレジットカードを登録し、課金ボタンを押した。エラーが出る。


「あっ、そのクレカ止まってるよ」


クレカ止まってるよ?

何故止まってるクレカを登録させたんだ?この俺に?

お前前者でもあったのか。


「支払い方法が分かんなくってさぁ!」

増えた。問題が増えた。


僕はOさんのクレカの支払い方法を教えた。

良かった。お金は持ってた。


「では、クレカ会社の方が支払いを確認をされ、反映されましたら、課金ができるようになりますので」

あとはどうか見えないところで、お幸せに。

ありがとうございました。



しかし事はそう容易く終わらない。


「プレミアム会員登録がさぁ!できないんだけど!」

出たな妖怪エロジジイ。


ほうほう、メールアドレス入力するだけじゃん。

「メールアドレスが分かんなくてよぉ!」

そこから?


一体何がそこまでエロに駆り立てるのか。 

エロなのか。エロがエロに駆り立てるのか。


どうせやべーサイト回るんだろ。新規でOさんのgmailアカウントを作成。今後のメアドの登録はこれを使ってください。



…というような話があった。


僕は悪いだろうか。

彼をなんとしても止めるべきだったのか。


とにかくOさんは何も知らない。

スマホの使い方も、クレカの支払い方も、モラルも倫理観も。善も悪も。


僕は彼に何ができるだろう。 


「旧Twitterならえっちな動画あげてる人いっぱいいますよ」とは教えた。

できるだけ安全で無料のものにしてほしい。だが、彼は今なお怪しいサイトにお金を支払おうとしている。



僕は彼に何ができるだろう。