断崖絶壁で衰弱しきった子猫を見つけたのが、始まりでした。
私たちの自宅は高低差のある地区で、お隣さんと言っても何mの上だったり下だったりするような地区にあります。自宅の1階とお隣さんの屋根が同じ高さにあるようなそんなところです。
この子猫がいたのは、一歩間違えれば転落の可能性がある場所で、幅30cmほどの崖の隅っこでした。
見晴らしの良く、日当たり良好な場所なのですが、自宅からは裏手にあたりほとんど行くことがありません。雑草も生えっぱなしだし、物置代わりになっていたり、使っていない園芸用品などが置いてあるようなところです。
その日はお客さんが来る予定だったのですが、少し時間があったので、何となく自宅の敷地内をうろうろしていたのですが、そこで発見したんです、私たちの「はじまりの子」である、白っぽい子猫を。
ここは猫以外にもたくさんの動物が暮らしています。カラス、アライグマ、タヌキ、キツネ、イタチ、ハクビシン、フクロウなどに出会ったことがあります。遠くまで見渡せる場所なので、私たちが気づかなくても、そのほかの生きものに見つけられていたかもしれません。
さて、この子をどうするか。
実はそんなことを考えた瞬間はなくて、「どうやって保護するか」で、頭はいっぱいでした。
人間が近寄ると逃げて崖から落ちてしまうかもしれないので、虫取り網で保護することにしました。
今でもあの緊張感は思い出せますね、ここで失敗しちゃいけない、そのドキドキでした。
息をひそめて、そっと勢いよく網を降ろすと、何とか入りました。が、
思っていた以上に子猫は暴れました。子猫だからと甘く見ていたこともありましたし、人に馴れていない猫と関わるものはじめてだったので、そこからは何の作戦もなく、ひたすらにただ一生懸命でした。
網から逃げ出しそうになる子猫を網の奥に入れて、手で子猫を掴みました。
今なら分かるのですが、そういうときは首あたりを持つとよかったのですが、そのときは片手で虫取り網を、もう片方で子猫の胴あたりを掴みました。
すると、ものすごい力で噛みつかれました。はじめて猫に噛まれて、とんでもない痛みで大絶叫しました。
その手を放すわけにはいかず、そのまま安全な場所まで移動して、虫取り網の上からゴミ出し用の大きな網の中へ入れ、その上から穴の開いた大きな四角いカゴを被せました。
「子猫を保護する」
字義通りのことができて、興奮と安堵が入り混じった気持ちでいっぱいになりながらも、さて次は何をしたらいいのか分からずに、スマホで鬼のように検索をして、なんどか「動物病院を受診」にたどりつきました。
▶続く