〔 上海の小雪さん 〕は 私の体験を出来るだけ忠実に回顧 当時の政治・経済や時代背景と上海事情を組み入れた ノンフィクションで綴るブログ記事です。 初めて読まれる方 忘れた方は 第一章・第二章 シリーズから お読み下さい。
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| 江戸の人達にとって 最高の娯楽は歌舞伎見物。 その歌舞伎役者が洒落を込めて作った文様は 江戸っ子の遊び心を 大いにくすぐり 流行しました。 私は 粋な洒落と駄洒落の言葉遊びで 愉しんでいます。 |
| 鎌輪奴文様 七代目市川団十郎が舞台で着て評判となる。「鎌」と「輪」と「ぬ」の字で「構わぬ」と読ませる洒落。 |
| 斧琴菊文様 三代目 尾上菊五郎 斧(よき)と琴(こと)と菊で「良きこと聞く」と読ませる。 小型の斧を「よき」という。 ライバル団十朗の「鎌輪奴」に対抗。 |
| 市村格子 十二代目 市村羽左衛門 一本と六本の格子の間に「ら」を置いて「いちむら」と読ませる。 |
第三章 その6〔 江戸前でござる 〕からの続き・・・
鮨は技で握る 心で握る 江戸前の心意気をごゆるりと
私は手を握る 心で握る 江戸銀前の心息が 緩やかに騒ぐ
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夜の帳が下り 澄んだ夜空には 昨日と同じ丸く美しい月が 二人を照らしている。
『 夕方 赤い夕陽の空に 雁が一列に並んで飛んでいるのが見えたんですよ。 』
『 雁が飛んでいる時 前の雁が羽ばたくと 後の雁に上昇気流が起き 楽に飛べるんですよ。
そして先頭の雁が疲れたら 一番最後に回り V字型の編隊から脱落しそうになっても
すぐに編隊に戻ってくるのだそうです。 ところで 江戸銀は コンドルかも知れない。 』
『 えっ コンドル? 』
釆女橋を渡り 通りの次の角を左へ曲がると すぐ江戸銀である。
左手で そっと小雪さんの右手に触れてみる。
小雪さん 突然の感触に 思わず手を引っ込める。
『 あれ~いけなかったかな。 』
『 だって 前から人が来るんですもん。 』
前方から 数人の男達がフラフラと・・・
ちょっとタイミングが不味かった。
酔った足取りの男達は 大声を上げながら 江戸銀に入って行った。
『 私も少し酔ったみたいです。 小雪さんに もっと寄っても いいですか? 』
『 エ~ 私に酔う??』
『 そう 小雪さんに酔って 傍に寄るのです。 』
『 エ~ 私に酔って ソバに夜 ??? 宵の蕎麦? ・・・ 』
江戸銀に入る。
『 っらっしゃ~い ! 』 板前の粋で威勢のいい声が 出迎える。
先ほどの男達が座っているテーブル席を横目に 二人はカウンター席に 肩を寄せ合うように座る。
揺れた長い黒髪から甘い香りがする。
シルクのように透き通り 白く輝く横顔が すぐ傍にある。
内面から滲み出るような 美しい顔で 小さく息をしている。
本当に美しい人というのは このような人を言うのだろうな・・・
小雪さん キョロキョロ辺りを見る。
『 どうしたんですか? 』
『 コンドルは いませんよ? 』
『 あっはっはは~ お店は 混んでいますよ。 やはり混んどるですよ。 』
『 またですか~ 』
『 さてと・・・ 』
『 和食には 日本酒ですね? 』
『 そうそう 流石の小雪さん。 』
『 だって Dotpedさんが 前にそう教えてくれたんですもの。 』
『 そうでしたね。 』
『 さっきの 夜に蕎麦って どんな意味? 』
『 夜に蕎麦ではなく お酒に酔い 貴女の傍にもっと近づいてみたいと言いたかったのですよ。 』
『 あはは~ Dotpedさんって どうして そんなに駄洒落が 得意なんですか? 』
『 料理を頼んでから 駄洒落について 少しお話しましょう。 』
よく冷えたビールと熱燗を頼み 後は面倒なのでメニューからコース料理を選ぶ。
『 おやつは 何か出るのですか? 』
『 おやつ? おやつではなく お酒のアテの付き出し お通しですね。 』
『 そうそう お見通しですね。 お金のお投資ではないですよね? これ私の駄洒落? 』
といいながら 勝手にクスクス笑っている。
『 お通しより シロウオの踊りがいいな! 』
『 え~ シロウオの踊りって何ですか??? 』
『 以前 博多へ出張の時 ご馳走になったのですが 白魚を生きたまま食べるのです。 そうすると
食べた人は踊りだすのです。 』
『 シロウオを食べると 踊りだすのですか? 』
『 冗談です。 生きて踊っている元気なシロウオを胃の中に流し込むのです。 大丈夫ですか? 』
『 あはは- 大丈夫! 中国には 豚足 とか カエル料理など 沢山ありますから~ 』
美しい顔には似合わない ゲテモノ料理の名前が次々と出てくる。 やはり中国人なのだと思った。
熱燗のお銚子を お猪口に注ぎ 乾杯をする。
『 今日は 枡酒ではないのですね? 』
『 今日は 調子がいいので とっくりと お銚子にしたのです。 』
『 またまた駄洒落ですか? 本当にお調子者ですね!! 』 ぅふふふ。
あの夢のように楽しかった 上海の枡酒会話が 懐かしい一瞬である。 ⇒ 〔第一章15舞妓さん〕
『 江戸の庶民は 始めて合う人とも洒落で打ち解け そこから笑顔のコミュニケーションが 始まるの
ですよ。 』
『 今 若い人が云う 親父ギャグでは ないのですか? 』
『 そこに微妙なニュアンスの違いがあり 江戸っ子は 言葉に対して鋭い感覚を持つ 言葉の遊び人
でもあるのですよ。 』
『 あらあら お口が達者なだけではないのですね! 』
『 面白い例えがあります。 〔 ありがたい 〕 と云われれば 〔 蟻が鯛なら 芋虫も鯨 〕 と切り
返すのです。 』
『 あり難い も 有難う も 同じ意味ですか? 』
『 あり難いという感謝の気持ちを伝える言葉が 有難うでしょうね。 会話にはウイットとユーモア
のセンスが必要ですね。 私は お酒に酔ってウイ~と これは下手な親父ギャグですね (゚ー゚; 』
小雪さん 仏蘭西語で ウイーと言いそう。
〔 江戸の駄洒落 〕 ありがとう には 蟻が十なら 芋虫ゃ二十歳 などと即座にまぜっ返す。
その手は汚ねぇ とくれば 北がなけりゃ日本は三角などと言い返す。 参考:杉浦日向子著書より
昔 ダメの 〔 駄 〕であったはずが 今 洒落と駄洒落の 区別がつかない。
ウイ~と酔った振り もっと小雪さんの傍に・・・
次回へ続く・・・
〔 おやつ 〕 江戸時代の八つ時(午後2時~4時)に食べる間食。 京阪の本願寺では、二時頃に修行の合図として太鼓を叩いていたことから、敬語の〔お〕がついて〔お八つの太鼓〕と呼ばれていた為、八つ時の間食にも〔お〕が付けらて〔おやつ〕となる。
〔 中国のゲテモノ料理 〕 猿の頭を輪切りにした猿の脳みそ カエルの姿煮 羊の睾丸 その他朝鮮族が多い東北地方では 犬鍋や犬肉クッパ 南部では 蛇 その他 サソリや蜂等々・・・
〔 徳利とお銚子 〕 徳利は 瓢箪を参考に作った陶器。 銚子は 結婚式などで 巫女さんが お神酒を ついでくれる柄のついた 金属や木製の器。 明治以降は混合して使用。