玄関先でプレゼントを渡す。
「ごめん、トイレだけ貸して」
「まあ、ココアでも飲んでいきなよ」
と、結局上がりこんでしまった。
プレゼントを開け、喜んでいただけたようで満足。
紙袋にはトローチも入れといたんだ。
感動薄いけど、ま、いっか。
ココア飲みながら、
「渋谷に行くの。映画観に。」
と言った。
何の映画か聞いてこない。
相変わらずわたしに興味ないようで。
「手、暖かくなった?」と、手を触れてきて。
そのまま、ニギニギ。
これは『しよう』の合図。
でも、わたしは知らんぷり。
ココアを飲み終え、
「じゃあ、行くね。」
と言ったら、
「もう行くの?」
と抱きしめられた。
頑なになってた体が、心が、少しほどけるのを感じた。
ギュウとされると、
だめなんだ。
わたしもギュウと力を入れた。
もういいや。
結局わたしはこうしたかったんだ。
あれやこれや、もろもろ悩んできたけれど、たったこれだけで十分。
ただ、抱きしめられたかっただけ。
Sさんも、ただやりたかっただけ。
でしょう?
だって、やった後、態度がそっけなくなるんだもの。
わたし、
「Sさん、フェードアウトかと思った。」
って、言うタイミング間違えたわ。
抱きしめられた時に言えばよかった。
コトの後に言ったら、
「え?」
と聞き返され、
「だって最近、なんか冷たいから…
でも、仕事が忙しかったのよね」
とわたしは言ったのだけど
…言ったのだけれど、
彼は口を開かなかった。
ただ神妙な顔をしていた。
「帰るね。あぁ、映画始まっちゃった。」
「気を付けて。寒いから風邪ひかないように。」
やったらあっさり帰してくれるのね。
ハグの効力も一瞬だったかな。
「次はいつ会える?」
そんなこと聞けなかった。
なんだろう、このギクシャクカップル。
抱き合ってる時だけ平和。
最初はこんなんじゃなかったのにな。
変なの。