「先輩、大丈夫ですか?」

『クライアントは、すぐ見つけられるって言ってたけどな』

「対象の情報何にもないんでしょ。パルテノン神殿にいるってだけで、そんな無茶な話あります?」

『あっ!』

「あっ!」

「あれですね。周りの観光客から明らかに浮いてますよ!なんか決め決めの野郎だな」

 

「対象のことなんて呼びます?」

『ギリシア人じゃなさそうだから、エトランゼ、か』

「アテネのエトランゼ、エトランゼAか」

『今日から3日間の追跡調査だぞ。クライアントからは接触は禁止されてる。俺たちのことばれないようにしないと』

「了解、了解」

 

「Aがノエルに入りましたよ」

『俺たちも行こう』

「なんつうか。悔しいけど絵になりますね。このまま店に飾っておきたぐらいだ」

『おい、こっちを見てるぞ。カンがよさそうだから、気をつけろって』

「すいません。でも、何か見られなれてるって感じですね」

 

「次は、ブレトスに行きました」

『よし』

「こっちに知り合いがいたのかな。なんの話してんだろ。声まで聞こえないなあ」

 

『船をチャーターするたあ、いい身分だな』

「僕もあっちの船に乗りたいです」

『我慢しろ。他に誰かいるか?』

「それが、微妙なんですよ。スカートのすそみたいなひらひらしてるものが見えるから、女が同乗してるのかもしれないです」

『恋人か?』

「う~ん、そこまではっきりとはわからないですねえ。あの表情は思いっきりリラックスしてますから、親しいのかもしれないし、ただ単に海好きなのかもしれないしなあ。もしや、ガイドか通訳って可能性もあるし・・」

 

『久しぶりだ。サントリーニ島はいつきても美しいところだ』

「先輩から美しいって。Aが女と待ち合わせしてます」

『ほほう、いい展開だ』

「Aがなんか楽しそうですね。いい顔してます。先輩もなんかいいですよ」

『うるせえな』

「ペリボラスホテルに泊まるみたいです」

『一泊10万以上するぞ。何者なんだよ』

「もしかしたら、貴族で、オックスフォードかなんか出てる、若手実業家とかだったりして」

『おもしろくねえな、まったく』

 

「二人で楽しそうにデートしてますねえ」

『・・』

「花が好きみたいですよ」

『・・』

「あ~、Aは猫が好きみたいです。なんか猫から寄ってってますよ」

『猫好きか。悪い奴じゃないんだな』

「・・」

 

「もうアテネに戻るのかあ。さすが、イアの夕日はきれいでしたね。先輩と見たのが残念だけど」

「彼女を駅までお見送りか。帰っちゃいましたね」

「わツ!こっち見た。目が合った!」

『落ち着け。偶然だ』

 

「ひとりで街にまた出かけますよ。バーに入った」

『忙しい野郎だな』

 

「3日目の今日は、岬に行って、美術館に行って、さすがにもう寝ますよね」

『おい、まだ夜の街をうろついてるぞ。昼間と顔つきがなんか違うな』

「え~勘弁してくださいよ。あんなに細っこいのに、Aって全然寝てないじゃないですか」

 

「とうとう、ポセイドン神殿まで来ちゃった。夜が明けましたね」

『ああ』

「Aともお別れですね。なんて報告します?」

『そうだな。お前、Aは男だと思うか?』

「6:4、いや7:3で男かな。最初は女かと思ったんですけど、しぐさが完全に男なんで、やっぱり男かもしれないなと思い始めて」

『俺も、そんなとこかな。女なら隠しても、もっと体がでこぼこしてるだろうからな』

「年はどうします?」

『あの手の顔はわからん。子供のようでもあるし、大人の落ち着きもある。適当に書いとけ』

「職業と性格は?」

『任せる』

「再依頼があった場合は?」

『うん?』

「僕はやりたいです」

「実は、Aと目が合った時、うれしかったんですよ。あいつが何者かわからないけど、追跡調査しているうちに、なんかAを気に入ったっていうか。あいつと友達になりたくなってたんです。まあ、そんなこと現実には起こるはずないんでしょうけど」

 

 

 

性別:(おそらく)男性

年齢:10~30代

性格:緊張とリラックスの差が激しい。カンがいい(要注意)。花好き。猫好き。あまり寝ない。よく食う

職業:自由業(役者または詐欺師の可能性あり)

再調査の受諾可否:可。またの機会があれば喜んでお受けする。

 

以上

 

追伸 れいちゃん、次期おめでとうございます。