しばらくブログをさぼってしまいました。
久しぶりに書くブログは演技論ではなく、美術展に行った感想です。
先日、芦屋市美術博物館で開かれている「菅井汲/松谷武判版画展」に行ってきた。
菅井汲は故人で、どういう人だか良く知らないが、松谷さんは一昨年に個展で詩を朗読させてもらって以来のお付き合いだ。
二人ともかつての「具体」グループで活躍した美術家で、結構無茶をしていたらしい。
無茶と言うよりも、その無茶をしたくなったもだえのようなものが、作品に現われていて面白い。
当日は松谷さんによる制作のデモンストレーションもあり、面白かった。
2m×10m程のキャンバスに木工ボンドに墨を練りこんだものを垂らし、定規のような板を当てて、一気に10mをひっかく。
うまく表現できないが、まあそんなことをやる。
それだけのことだ。
だがそれが面白い。 出来た作品も面白い。
時間とともに、ボンドが乾き色が変化する。
ひっかいたことで、予想しなかった床の模様がキャンバスに浮き上がる。
名作とも思わないし(失礼)、美術館に展示するのも似合わないと思うが、どこかその辺にぶら下がっていれば面白い。
その場の空気を生み出すだろう。
他の展示作品も見たが、一つ一つは面白いが、解説付きでまとめて並べて展示されても面白くない。
レプリカではなく、実物なのだが、作品紹介にしか見えない。
美術館は、作品を殺してしまう場所に思えてくる。
ピカソやモナリザを飾っても、作品ではなく教材にしてしまう。
今回は版画展だったが、松谷さんの作品はボンドを使いキャンバスからはみ出したり、浮き上がったりした作品が多い。
肉感的だ。
鑑賞するというよりも、作品に触発されて、パフォーマンスがしたくなる。
それらの作品は、つい手を伸ばして触ってみたくなるのだが、美術館だとこう書かれている。
「作品には、お手を触れないでください。」