赤ちゃんの泣き声を聞いたり、出産間近の妊婦さんと廊下ですれ違う病棟に入院するのかと思いきや、全く導線が交わることのない静かな静かな病棟の個室に案内されました。
カラス鳴きがうるさく、窓の向こうは暗くどんよりした外の景色。
夫は様々手続きがあるということで、病室で一人赤ちゃんがなくなった原因は何かと考えるばかりでした。
看護師さんから陣痛促進剤を渡され、説明があったはずなのにどうしてこの薬を飲まなければならないのか一瞬理解不可能な状態になり、看護師さんが部屋を出るころようやくこの後のことが理解できました。
そうです。赤ちゃんをこのままお腹の中に置いておくわけにはいかないのです。
私がしたかった経膣分娩という形で赤ちゃんを体外へと出さなければならないのです。
ここでようやく現実の重さに耐えきれず涙がこぼれ、声をあげて泣いてしまいました。
どのくらいの時間がかかったのか記憶にないのですが、第1子を帝王切開で出産した私は陣痛の痛みや感覚がどんどん大きく、短くなるにつれ恐怖感と赤ちゃんに申し訳ない気持ちとで、夫が心配そうに気遣ってくれているのに全く心に余裕がなくなっていました。
数時間後。ようやく分娩台に移動。ドラマで見た光景だと思ったのですが、ドラマだったらこの後の展開でオギャーという元気な産声を聞くことができるはずなのに、それを聞くことがないのだと思うと涙が止まらなくなったのでした。