少年は海の突堤に腰掛けて海を見ていた。

穏やかな陽だまりの中で少年の頬を軽く撫ぜるような

優しい風が吹いてそのまま居眠りをしそうな・・・。

少年は思った。

(すべてこのまま時が止まって世界がずっとこのままだったらいいのに・・・。)

彼の横にはいつの間にか茶色の縞の猫が座っていた。そして少年に話しかけた。

(そんなときは寝てしまえばいいんだよ。それで夢を見れば・・・。)

少年は横を振り向いて茶色の猫を見た。

(どうして?)

猫は答えた。

(夢を見ている間だけそれは叶うんだ。それは時を止めることもできるし時を進めることもできる過去も未来も自由に旅もできるんだ。)

少年は笑顔で答えた。

(わかった。このまま昼寝をしてずっと夢を見るよ。ありがとう、猫さん。)

少年はそのまま突堤に寝そべって青い空を見てそして目を瞑って眠りに落ちていった。

ふと現実に帰るとそれは夢であった。

中年のサラリーマンの男は、そんな夢を見て目覚めた。

まだ起きるには時間が早い。もう一度寝よう。二度寝だ。

それで再び夢を見よう・・・続きを・・・。

男はまた、ふとんを被って寝てしまった。

彼の飼っている茶色の猫が耳をピクピク動かしながら丸くなって様子を窺うようにちょっとだけ閉じている目を少しだけ開いてまたすぐに閉じた。