
プロローグで 「 音楽には国境がある 」 という言葉から始まる、本格的な音楽論、小澤征爾論です。
遠藤浩一著 「 小澤征爾~日本人と西洋音楽 」( PHP新書 )。じっくり時間をかけて、少しずつ読み進めて
来ました。
小澤さんの師である齋藤秀雄氏の 「 齋藤メソッド 」 という基礎的訓練の話から始まり、音楽評論家たちの
小澤評価を例に出しながら、小澤音楽の神髄に迫って行きます。
フルトヴェングラー、トスカニーニ、カラヤン、バーンスタインといった巨匠。
バッハ、モーツァルト、ベートーベン、チャイコフスキー、ブラームス、ショスタコービッチといった偉大な作曲家
たちとその作品。
さらには菊池寛、小林秀雄、三島由紀夫といった作家たちの言葉。
様々な事例や、いろいろな人たちの言葉を通じて、小澤の目指している音楽の本質を解き明かす・・・そこには
東洋と西洋、日本人と西洋音楽といった根本的な違いがあって、これをどう解釈するかが論点のひとつになって
います。
【「 音楽には国境がある 」 と意識しつつ、国境を越えて活動するところに小澤征爾という国際的
指揮者の真骨頂がある。ボーダーレスなどといういかがわしいスローガンに与することなく、日本人
であることを自覚し続け、その孤独の底で、小澤は西洋音楽と格闘し続けた。その結果小澤でなけれ
ばできない演奏が生まれ、今日の地位を手に入れたわけである。】
随所に、歯に衣着せぬ小澤論が展開され、小澤讃歌の内容になっていますが、嫌味も外連味もなく筆者の
正直で素直な論理展開は、参考にもなるし、面白く、好感が持てました。
【 2013年12月17日 読了 】