
『 虫眼とアニ眼 』 養老孟司さんと宮崎駿さんの対談集です。新潮文庫。
巻頭に、「 養老さんと話して、ぼくが思ったこと 」 と題して、宮崎さんの宮崎さんらしい細かいイラストが
数ページ載っています。
宮崎さんが妄想した、ある意味では理想とする架空の 「 イーハトーブ町 」 が描かれていて、刺激的な台詞が
ちりばめられています。
<生活のあり方をかえないと、この文明は滅びるぞ。>
<家をかえよう、町をかえよう、子供達に空間と時間を!!>
<町のいちばんいい所に、子供たちのために(幼稚園もかねる)保育園を!>
<なんでもかんでもバリアフリーにすると、老化を早めるだけだ。子供だって老化するぞ!>
次に、本文の対談を読んでいると、昭和10年代生まれの二人の人生観・社会観・教育観が微妙に重なり合い
ながら、刺激的に、過激に、深い優しさを内に秘めながら展開して行きます。
こちらにも、ドキッ!とさせられる部分が随所に出て来ます。
ファンの親から、自分の子供はトトロを100回も見ているという手紙をもらって、
< トトロの映画を1回見ただけだったら、ドングリでも拾いに行きたくなるけど、ずっと見続けたら
ドングリ拾いに行かないですよ。なんで、そこがわからないんだろう・・・。>
ほかにも、
< 知的な好奇心さえ失わなければ、勉強なんてもっとあとでやっても間に合うんです。>
< 現代は先が見えない時代だという。先が見える時代がそれならあったのか。>
< 子どもが子どもでいられない。そんな変な時代は、そろそろやめにすべきであろう。>
< 生きる力なんて、子どもははじめから持っている。それをわざわざ、ああでもない、こうでもない
と、ていねいに殺しているのが、大人なのである。>
この二人・・・言いたい放題言っているようで、根底には鋭い洞察力があります。
【 2012年9月18日 読了 】