芝居を観るのは、本当に久しぶりのことでした。
『 ジョン・ガブリエルと呼ばれた男 』
原作/イプセン
上演台本/笹部博司
演出/栗山民也
出演/仲代達矢、大空眞弓、米倉斉加年、十朱幸代

出演者は、この4人だけ。
音楽もほとんどなく、舞台も極めてシンプル、こういう舞台は、ある意味初めてでした。
4人が入れ替わり立ち代りしゃべるセリフ・・・。
そのセリフだけで、話が進んで行きます。観客は、そのセリフだけで、この物語の全貌を理解して
行かなければなりません。

「 夢を生きる男 」= ジョン・ガブリエル・ボルクマン = 仲代達矢
ジョン・ガブリエルと呼ばれ、国中の人間から仰ぎ見られた銀行の頭取がいた。
その男はすべてを投げ打ち、世界を手に入れようとした。しかし勝負に敗れ、奈落の底へと転がり
落ちる。それから、何十年もの月日がたつ。男は忘れられ、見捨てられ、人里離れた北の果ての地に
いる。口も利かず、顔を合わせず、憎しみをたぎらせた妻が、あたかも看守のように見張っている。
「 憎しみを生きる女 」= グンヒル = 大空眞弓=夫を憎むことだけが生きがいのボルクマンの妻。
「 誰でもない男 」= フォルダル = 米倉斉加年=今や残ったボルクマンのたった一人の友人。
「 愛を売られた女 」= エルラ = 十朱幸代
日本を代表するような舞台俳優たちの、いわば 「 バトル 」 を観ているようなものでした。台詞の
一言一言に迫力があって、4人がそれぞれの人生を賭けているような舞台。
イプセン晩年の作品ですが、ギリシャ悲劇やシェイクスピア悲劇にも通じるような独特の雰囲気を
醸し出していました。