もちろんフィクションですが、ありそうな話の連続。テンポが良く、今どきの会社ならこんなのも
「アリ」だろうなぁーと思うような登場人物、それらが織り成す人間模様。随所で笑えますが、内容は
実はシリアス。一気に読めます。
第一章「トイレのポツポツ」は、「田布勢○長は激怒していた・・・。」に始まります。何に激怒して
いたかと言えば「トイレのポツポツ」に・・・。
最終章「チェンイー」は、「田布勢○長は睨めつけるように見渡すと、つぎの瞬間、にやりと笑って」
こう言います「この会社のトイレにポツポツはないだろうな」
ある女性派遣社員が部長に命じられて、全部員に送信した1通のEメール。すべてはそこから始まり
ます。途中の章立ても、あっちとこっち、そっちとコレが絡み合っていて、お見事!
後段になってから、こんな表現が出てきます・・・、
「中国人と付き合うために必要なものは“ チェンイー(誠意)” しかない。」
「やはり世の中、ちゃんとした商売をやななければだめってことですよね。コストだの
マーケティングだのも大切ですけど、それだけで売っていた製品は一つも残っていない・・・」
「コストだけを重視した中国食材ではなく、本当の意味で真っ当な食材を中国からも取り入れて
行くべき」
「日本の食料自給率は引き上げなければならない。-(中略)- だからといって、国産であれば
すべてよし、といった食材ナショナリズムに陥ってはいけない。-(中略)-世界の食材との
交流を深めて行くことはとても大切なことだ。」
本の表題は、少し「おちゃらけ」が入っているし、筋立ても「軽め」なことは確かですが、テーマや
会話の中身は、とても奥が深いものがあります。
『鴨之木製麺工業』が『チェンイーフーズ』として新しい一歩を踏み出すまでの、お話。
相当あちこちの企業にも、当てはまることが多いような気がします。