2021鹿児島大の英作問題を書く。

 

次の対話の下線部⑴〜⑷の日本語を英語に直しなさい。

A: Hi, it’s been a long time since I last saw you. How have you been?

B: What do you mean? We meet every day.

A: We only meet online by using chat rooms, social media groups, and smartphone apps.

It’s not the same.

B: Oh, I see your point. I guess that's right; we do spend most of our time online. (1)から, 面と向かって人と話すと新鮮に感じるね

A: I do almost everything online. I checked how much time I have been using my smartphone. (2)ここのところ,毎日平均5時間くらい使っているよ

B: That’s a lot. (3)でも, スマートフオンのおかげで実際に会えない人とつながることができるよね

A: Sure, but, as you mentioned, I still think we need to spend some time meeting people in a real situation; going for a coffee, or just hanging out. (4)時々,自分の友達は皆, 現実の人ではなくて, プロフィール画像とユーザーネームだけだと感じるよ。

B: All right, let’s go and get some coffee. It’s my treat.

 

まず、語彙について若干説明しておく。

<語彙>

・「面と向かって」

この文脈では、「顔を合せて」 「顔を見て」の意味である。英語では face to face を副詞や形容詞の形で使う。形容詞の場合は、face-to-face のようにハイフォンを入れて、have a face-to-face conversation「直接、顔を見て話をする」のように使う。思い浮かばなければ、meet someone and talk to him / her のように「会って話す」とすればよい。

 

・「新鮮に感じる」

「新鮮」という言葉を単純に fresh としないこと。fresh は野菜や果物などが「新鮮な」という意味である。これが「爽やかさ、清々しさ」の意味で使われるが、この文脈では fresh は適切ではない。この文脈における「新鮮な」は「何か新しい感じを与える」give you a feeling of something new / a sense of newness くらいの意味である。なお、a sense of freshness と fresh を名詞形にすれば使える。

 

・「現実の人」

「現実の人」は、「実在の人物」 real peopleであって、virtual people「仮想の人間」ではないということ。

 

・「プロフィール画像」「ユーザーネーム」

このようなネット関連用語は、そのまま profile image, user nameと直訳できる場合が多い。

 

では、1文ずつ解説する。

 

<第1文>

「だから, 面と向かって人と話すと新鮮に感じるね。

 

この日本文を when I talk …. と書き出すと書きにくい。まず、この日本語が「AするとBだ」構文であることに注意する。日本語は「~したら」「~すると」という構文が非常に多い。これを単純に When S + V,  If S + V で書き始める受験生が多いが、この直訳は英語になりにくい場合が多いことに気づいて欲しい。書きにくいと思ったら、英語はSVOだということを思い出し、無生物主語で書けないかと考える。すると、次のような和文和訳文が頭に浮かぶはず。和文和訳文と英訳を示すが、その前に人称代名詞について一言。

 

「主語」や「目的語」にくる人称代名詞は要注意。この日本文を見て、すぐ me や us を使いたくなるが、この文脈における 「新鮮に感じる」のは「私」や今話をしているAとBの二人である「私たち」だけか。一度立ち止まって考える癖をつける方が良い。これが誰にでも当てはまる「一般論」なら you が適切。ただ、AとBの会話では、you と we しか使われていず、we は「今時の人間である我々」という感じではなく、AとB の二人を指していると思われるが、「今時の私たち」と「過去の人間」と区別する意識なら、 we でもよい。ここはちょっと考えるべきところ。ここの訳例は、個別具体論としての一般論として you を使い次のような和文和訳を行い、それを英訳してある。

 

「だから、面と向かって人と話すことは何か新鮮さをあなたに与える」

So, talking with someone face to face gives you a feeling of something new.

 

もしくは、「話すこと」という動詞的表現ではなく、端的に「会話」と名詞にすることもできる。

 

「だから、人との面と向かった会話は新鮮さを与える」

So, face-to-face conversations give you a sense of freshness.

 

<第2文>

「ここのところ, 毎日平均5時間くらい使っているよ。」

 

この英作文は文法英作文レベル。「ここのところ」は these days, recently などが使えるが、recently を使った場合は完了形にすること。現在形は不可である。「時間を使う」は spend time doing, もしくは後に名詞が来る場合には spend time on ~とする。time は「平均5時間くらい」となっているので、time のところに about five hours on average を入れれば良い。以上をまとめると次のような訳例が書ける。

 

These days, I spend about five hours on average every day on my phone.

 

<第3文>

「でも, スマートフオンのおかげで実際に会えない人とつながることができるよね。」

 

「~のおかげで」と出てくると、受験必須の thanks to ~で書き出す受験生がほとんどだと思うが、英語はSVOが基本ということを考える癖をつけて欲しい。すると、無生物主語構文が浮かぶ。無生物主語構文を使うとmake it possible for A to do / allow A to do / enable A to doなど、受験必須表現のいくつかがすぐ頭に浮かぶ。日本語構文をそのまま英語にしようとすると、英語頻出表現が使えない。もったいない話なのだ。構文転換を意識すると受験文法、受験構文が生きてくる。では、このことを念頭に和文和訳をすれば次のような日本文ができるであろう。

 

「でも, スマートフオンがあなたが実際に会えない人とつながることを可能にする」

 

ここで「意味上の主語」を持ってくることが重要。意味上の主語は要注意。Bの台詞は、別にAだけが、「人とつながることができる」という話ではなく、一般論として「誰でも人とつながることができるということ」。このような一般論、特に、私も君もといった個別的、具体的なイメージを持って一般論を語るときは、you が最も適切。例えば、日本にやってきた人に、日本人は食事のとき箸を使って食べるということを説明したいとき、 We use ~と始めず、You are supposed to use chopsticks when you eat in Japan. と you を使う。

 

次に語句の説明をしておく。「実際に会えない人」は「直接顔と顔を合せて話ができない人」という意味だが、これは in person が使えれば良いが、思い浮かばなければ、actually くらいの副詞を使って、someone who you actually can’t see と書いても良い。また、「人とつながる」は、connect という動詞を使って、keep connected to (with) ~が使えれば良いが思い出さなければ、「人と話をすることができる」と talk with ~/ communicate with ~ などとしても良い。なお、「人と繋がる、人と繋がっている」は be connected to (with) と受け身で使うのが一般的なので注意。以上のことを念頭において、訳例を示しておけば、

 

「でも, スマートフオンがあなたが実際に会えない人とつながることを可能にする」


However, smartphones allow you to keep connected to other people who you cannot see in person.

 

<第4文>

「時々,自分の友達は皆, 現実の人ではなくて, プロフィール画像とユーザーネームだけだと感じるよ。」

 

語句について。最近は、パソコン関連の言葉が英文解釈でも英作文でも頻出する。ワード、エクセルという言葉を聞いてもなんのイメージも湧かない受験生もいるが、これはかなり受験においてハンディがあると認識しておいた方がよい。第4文の「プロフィール画像」「ユーザーネーム」なども英文解釈だけでなく、英作文でも使えるようにしておく必要がある。

 

次に「感じる」という日本語について。「~だと感じる」と出てくると機械的に I feel that S + V で書き始める受験生が多いと思うが、英語は I think that S + Vが頻出だが、 I feel that S + V はあまり出てこないことに気づいて欲しい。機械的に I feel that S + Vで書く前に一度は立ち止まる習慣を身につけて欲しい。英語が think を多用する一方で、日本語は「感じる」を多用する。これを直訳すると不自然になる場合が多い。「~を痛感させられる」「痛感する」「痛切に感じる」は英作文頻出語句の一つであるが、これを feel strongly that S + V とはまず書かない。これらの日本語に相当する英語表現はいろいろあるが、受験生としては、まずは I realize that S + V や S + remind me that S + V のような形を覚えるとよい。また remind を名詞にして、S is a sharp reminder that S + V の形もある。他にもあるが、まずは自分が使えるものを必ず一つは用意しておこう。なお、次の訳例では、受験必須知識の <make me feel as if 仮定法>を使っている。

 

構文について。この日本語は単語の知識さえあれば簡単に書けそうだが、「英語の論理」ということを考えれば、下線部前に述べられていることを考慮に入れて、「人と直接会って話をする機会がないこと」を主語にして無生物主語構文で書いてみた。このようにすると「論理」、つまり因果関係が明瞭になる。「論理的でない」と言われる日本語を因果関係が分る形にすると英語らしくなる。また、このことが分ると英作問題は書きやすくなる。

 

では、まとめとして問題文、和文和訳文、英語と並べて提示する。

 

「時々,自分の友達は皆, 現実の人ではなくて, プロフィール画像とユーザーネームだけだと感じるよ。」

 

「時々,そのような機会がないことが私に自分の友達は皆, 現実の人ではなくて, プロフィール画像とユーザーネームだけだと感じさせる。」

 

Not having such opportunities sometimes makes me feel as if all of my friends were not real people, but just profile images and usernames.

 

以上、日本語と英語の構文の差違。また、英語の「論理」ということが SVO 構文と密接に関係していることを分って貰えれば幸いである。