なぜ、大阪で自民、立憲は一掃されてしまったのか。

 

大阪14区、自民候補の長尾たかし。私は嫌いな政治家ではない。YouTube動画で何回も見ている。応援演説に安倍元首相が来るというのでミーハー的だが近鉄八尾駅へ行って始めから終わりまで見てきた。長尾たかし氏とはグータッチもしてきた。応援演説には多くの人が集まっていた。だが、長尾氏は前回から1割以上の票を減らし、比例復活もできなかった。

 

長尾氏はたぶん気づいていないと思われるし、支持者たちも気づいていないと思う。長尾氏は政治家としては天下国家を語り、中国の覇権国家、人権抑圧にも正面から批判する立派な政治家である。桜井よしこ氏など保守論客の支援も厚い政治家である。その面では私も国政で活躍して欲しい政治家である。

 

だが、いかんせん、安倍首相の前座として長尾氏の応援演説をする市議会議員や元市長などの演説を聞いていて正直、私は辟易とした。長尾氏は立派な「政治家」であっても長尾氏を支えている人間は「政治屋」である。彼らは長尾氏が道路建設の金を持ってきてくれた。幼稚園を作る予算を取ってきてくれたと言った金の話ばかりだ。政府から金を取ってくる話ばかり。田中角栄の小型八尾版である。


もちろん、道路などのインフラ、学校などの施設の建設には金がいる。そんなことは当たり前である。だが、その金を捻出するのに長尾氏の支持者の自民党の人たちは金を取ってくるという話ばかり。スクラップ&ビルドの思想がまったく感じられなかった。俺たちの代表は政府から金を取ってくる力がある。だから支援しなければならないという感じしかない。


政治家の重要な仕事は予算の再分配である。その再分配には町全体、府全体、国全体を考慮に入れた分配が必要である。だが、大阪自民の政治屋たちは、「俺たち」のことしか考えていない。「俺たち」のために長尾たかしが国から金を分捕ってきてくれた。ありがたい、ありがたい。是非、今回も長尾タカシを国政に送って金を分捕ってきてもらおう。こんな応援演説を次から次へと聞かされて私は少々辟易とした。


この支援者たちから国防、ウイグル人弾圧、日本の安全保障の問題など語られることはなかった。長尾たかしは「高尚な」話、世界における日本を語れる立派な政治家だが取り巻きは「金、金」と金の話ばかりしているレベルの低い「政治屋」の印象である。

 

維新の勝利を長尾氏は松井・吉村コンビの選挙戦略の巧妙さのように語っていたが、それは表面的なことで、維新スピリットの根本を理解していないと言わざるを得ない。維新の身を切る改革は、スクラップ&ビルドの「スクラップ」をやるためには、必要なら自らをスクラップにする覚悟があるということを示す意思表示なのである。


大阪の自民の腐れ根性は自分の既得権益は絶対確保、自分と関わる団体・組織の既得権益も絶対確保。そして、その上で、もしくはそのために、道路を作る。学校を作る。公園を作るという話になる。ビルド&ビルド&ビルドである。これが可能だった時代はとっくの昔に終わっている。日本経済が右肩上がり、経済成長率が7%だの10%だのといった時代の話である。だが、長尾氏の取り巻き「政治屋」たちにそれが分っているという印象は皆無だった。


この大阪の「政治屋」たちがどれだけ根性が腐っているか。ウイグルの人権問題。中国の脅威。北朝鮮のミサイル。アメリカの凋落傾向。このような世界が激変しているときに長尾氏のような政治家が国政にはもっともっと必要である。私はその点、長尾氏を支援したい。


だが、足元の大阪の自民党「政治屋」の酷さから長尾氏は目をそらしている。自分たちの利権・利益のためなら、共産党とも手を組む。立憲は今回、共産党と手を組んで惨敗した。立憲は大阪から何も学ばなかった。先のダブル選挙。共産党と敵対すべき自民党が私利私欲のために共産党と手を組むという腐りきった根性を丸出しにした。その結果の敗北を長尾氏は直視すべきだったのである。

 

 

次に大阪10区。私の選挙区。立憲最後の牙城である辻元清美王国。こちらも1万票以上の差を維新候補につけられて惨敗。比例復活なし。


私はこの敗北の根本要因は、長尾氏の敗北と共通すると思っている。外交・国家安全保障の問題など、その立場の違いは大きい。だが、辻元清美王国とも言うべき高槻・島本の市議会議員、町会議員は長尾氏支持者たちが「政治屋」であるのと同様、「政治屋」ということでは共通なのだ。辻元清美は政治の分らない大阪のおばちゃんたちに人気だ。


私は辻本清美の強さの理由を探った。辻元はテレビなどの露出度が突出していることもあるが、それだけではない。話し方が受ける。話のキレがよい。弁舌爽やかなのである。辻元の裏についている関ナマなどの怪しげな支援団体のことなど一般の人は知らない。メディアも辻元の裏組織隠しに非常に協力的である。したがって、辻元の表面的な言動がカリスマ性を生むのを助けてきた。


だが、辻元はそれだけに頼っていない。支援団体が熱心に活動し、街宣車を頻繁に走らせる。国政報告をやる。テレビだけではなく、地元での露出度も自民党や維新の国会議員よりもはるかに高い。

 

だが、立憲の辻元配下の町会議員などががやっていることと言えば、長尾氏の支持団体が土建屋的な発想の「金出せ、金だせ」に対して、弱者の味方面をして「教育に金だせ、子供のために金だせ、貧しきもののために金だせ」で、「金を出せ!」ということではまったく共通なのだ。


ここにもスクラップ&ビルドの思想は皆無。両者とも、私の言う「第三の有権者」(一般には浮動票などと言われる)には保守は保守の既得権益、左翼は左翼の既得権益や利権の拡充をしか考えていないようにしか思えない。


辻元も自分が勝つためなら、また既得権益のためなら、自民党のかつての大物議員も応援演説に頼み、陰では共産党の支援も受けるという無茶苦茶な選挙を行った。

 

自民も立憲も所詮、自分たちの既得権益、利権しか考えていないだろうという一般の市民・府民(第三の有権者)に、スクラップ(身を切る改革)をすれば、ビルド(府民全体により多くの再配分)ができるということを見える形で示したのが維新だったのである。


吉村知事のテレビへの露出、人気だけではここまで維新が大阪を席捲できるはずがない。東京中心のメディアや政治評論家には「身を切る改革」が単にパフォーマンスにしか見えていず、その「身を切る改革」を支えている思想がまるで見えていない。左翼政治評論家は維新は自民の「補完勢力」と断定し、そこで思考停止。したがって、維新の勝因など決してまじめに分析しない。彼らの評論やコメントは核心からほど遠い維新批判か罵詈雑言にしかならない。そして、「維新旋風」だの「維新突風」だのと一過性の台風が来たかのような浅薄なコメントで終わる。


自民党の中でも、志の高い長尾たかし氏のような人には活躍して欲しいと私も思う。だが、その前に自分の足元を直視し、自分の支持団体の改革からやっていかざるを得ない。これを人情・しがらみで改革できなければ、大阪自民は終わったままの状態が続くであろう。


次の参院選が一つの重要な里程標となる。維新以外の政党が今回の維新の大躍進を見て、維新の勝利がスクラップ&ビルドの思想に基づいた改革政党であり、自分たちが守旧派の利権固執政党であるということを自覚しない限り、参院選でも維新の躍進を止めることはできないであろう。私の予測が当たるかどうか、しっかり注視しておきたい。