2021京大英作問題

 

【問題文】

言うまでもなく, 転ばぬ先の杖は大切である。しかし, たまには結果をあれこれ心配する前に一歩踏み出す勇気が必要だ。痛い目を見るかもしれないが, 失敗を重ねることで人としての円熟味が増すこともあるだろう。あきらめずに何度も立ち上がった体験が, とんでもない困難に直面した時に, それを乗り越える大きな武器となるにちがいない。

 

<解説>

【第1文】 「言うまでもなく, 転ばぬ先の杖は大切である。」

 

・「言うまでもなく」 は、受験必須文法項目。needless to say, / It is needless to say that S + V / It goes without saying that S + V などがあるが、自分が知っている表現を使えばよい。

 

・「転ばぬ先の杖」  大学が解答例を出さないので、はっきりしたことは言えないが、この諺に相当する英語(Look before you leap.)を知っていなければ減点ということはないであろう。知っていることに超したことはないが、知らなくても大丈夫なはずだ。要するに、この諺の言わんとすることを自分の英語で伝えればよい。つまり、「何かをする前に、そのリスクを良くかんがえておくこと」、もしくは「失敗しないように良く準備をしておくこと」というように意味を取ってその意味を英語で伝えるということである。従って、それを英語で表現すれば、以下のような訳例ができる。

 

When you try something, you take risks involved into consideration. / When you do something challenging, you should make good preparations for it in case it fails. など。

 

【第2文】「しかし, たまには結果をあれこれ心配する前に一歩踏み出す勇気が必要だ。」

 

・「結果をあれこれ心配する前に」の「あれこれ」は worry a lot about くらいで十分である。「結果」は「何か行動を起したときにそれがもたらす結果」である。SVOを意識して書けば、what the action will result in という文法必須表現が使える。the resultと書くよりもこちらの方がいいであろう。

・「一歩を踏み出す」とは「行動を起す」ということである。take action と言える。もちろん、take the first step toward ~「~の方向へ一歩を踏み出す」を知っていれば、When you try something, it is important for you to have the courage to take the first step toword it. とすることもできる。

 

【第3文】 痛い目を見るかもしれないが, 失敗を重ねることで人としての円熟味が増すこともあるだろう。

 

・「痛い目を見る」というのは、「ひどい、つらい経験をする」くらいの意味である。したがって、have a painful experience や have a hard time が使える。

・「失敗を重ねることで人としての円熟味が増すこともあるだろう」の部分は、典型的な日本語構文「~したら、AはBする」のバリエーション。またこの文には、「人として」という日本語特有表現がある。まず、日本語構文「~したら、AはBする」であるが、この日本語構文は、一度SVOに転換することを考えてみる。「失敗を重ねること」は、日本語は述語構文が多いので、一度名詞句にできないかと考えてみる。すると、「繰り返される失敗」 repeated failures、もしくは単純に「多くの失敗」 a lot of failures などの表現が思い浮かぶ。この名詞句を主語として「繰り返しの失敗があなたを成熟させる」と無生物主語構文にするとSVO構文になる。「円熟味を増す」は、要するに「成熟させる」ということである。mature, または maturity という名詞を文法的に正しく使えばよい。例えば、make you mature, add to your maturity などとできる。また、「人として」は典型的な日本語表現の一つ。英語にはこれに相当するぴったりした表現はない。また、文脈によって省略した方が自然な場合も多い。ここは省略して良い文脈だと思うが、もしどうしても訳出したければ、as a person / as an individual にする。as a human being などとしないこと。

 

【第4文】 あきらめずに何度も立ち上がった体験が, とんでもない困難に直面した時に, それを乗り越える大きな武器となるにちがいない。

 

・このような長い一文は、まず修飾語句を整理して文の骨子を取り出すこと。その時に主語や目的語をはっきりさせる。また、1文を複数の文にして考えてもよい。「あきらめずに」「何度も」などは後回しにして、「立ち上がる」は「誰」が「何から立ち上がる」のかと考えれば、「あなたが自分の失敗から立ち上がる」と理解できる。You get over your failures. / You overocme your failures. などと書ける。また、「体験」という言葉は、この文脈においては、「~したこと」の「こと」のバリエーションである。いきなり同格表現で the experience that S + V などと書かないこと。日本語の<連体修飾語+名詞>構文をいきなり英語の同格表現で書くと不適切な英語や文法的に不可の場合がある。まず言いたいことの骨子を取り出し、それを英語で書き出しておくことが、急がば回れで、結局そちらの方が速く、的確に書けるようになる。次に「武器」という言葉も weapon と直訳せず、他の表現ができないか考えて見る。すると次のような日本語が浮かんでくるだろう。

 

「あなたが失敗から立ち直ることは、あなたが非常な困難に直面したときにそれを克服するのに非常に役立つ。」

 

まずはこれくらいの日本語にしておいて、この日本文が英語のSVO構文に相当することを確認して次のような下書きを書いて見る。

 

Getting over failures will be of great help when you face a huge difficulty.

 

「非常に役立つ」は、help you a lot のようにしてももちろん良い。これに「何度も」や「諦めずに」を付け加えていけば、

 

Getting over a lot of failures without giving up will be of great help when you face a huge difficulty.

 

これに「経験」をもし付け加えるならば、同格のthat ではなく、前置詞の of を使って、 experiences of getting over ~とする。 experiences と複数形にするのは、一回の経験ではなく、何度も何度ものニュアンス。 experienceを動詞で使えば、 experiencing getting over ~ とできる。

 

【まとめ】

  以下で、再度問題文と訳例を出しておくが、解説の箇所と異なった英語表現を用いているところもある。これはいろいろ訳出可能ということの例だと思って欲しい。今回のポイントは二つ。日本語的語彙の意味伝達ということ、日本語構文を英語構文に転換するということの2点である。そこをしっかり理解して欲しい。

 

【問題文】

言うまでもなく, 転ばぬ先の杖は大切である。しかし, たまには結果をあれこれ心配する前に一歩踏み出す勇気が必要だ。痛い目を見るかもしれないが, 失敗を重ねることで人としての円熟味が増すこともあるだろう。あきらめずに何度も立ち上がった体験が, とんでもない困難に直面した時に, それを乗り越える大きな武器となるにちがいない。

 

【訳例】

Needless to say, it is important  that you should make good preparations when you try something new. However, it is sometimes necessary for you to have the courage to take action before worrying a lot about what the action will result in. You may have a painful experience. However, I think a lot of failures will make you more mature. And also, experiences of getting over a lot of failures without giving up will be of great help when you face an incredibly difficult situation.