今回も日本語構文の特徴を見極め、その日本語構文を英語の基本構文(SVO)に転換して書く方法について説明する。一見、遠回りなように思われるかもしれないが、これに慣れてくると、書きやすく、また分かり易い英語が書ける。2021年岡山大学の英作問題を取りあげ、説明していこう。

 

【出題文】

 

 和歌山市の沖合に浮かぶ友ケ島は「要塞(ようさい)の島」として知られる。こけむした砲台跡が並ぶ無人島は評判通り、アニメ「天空の城ラピュ夕」のよう。環境政策が専門の千葉知世大阪府立大准教授(3 5)は、ここに関西一円のゴミが流れつくのではないかと現地調査を始めた。島の4力所を分析すると、ゴムや金属、発泡スチロールよりも、圧倒的にプラスチックが多かった。①割合は少ないけれど、レジ袋の被害も深刻だと千葉さんは言う。「薄いレジ袋は波や紫外線で叩かれて小さな粒になり、海に流れ出てしまう。回収のしようがありません。」

 さて、あすからいよいよ、プラスチック製レジ袋の有料化が始まる。②思えば、これまで自分はいったい何枚捨ててきたのだろう。③その総量を想像すると怖くなる。レジで「袋は要りません」と言い損ねて後悔したことは数え切れない。この小さな島はずっと前から、漂流するプラスチックゴミを懸命に食い止めてきた。④安いから軽いからと便利さに甘え、大量消費してきた社会の負の側面が見えた。

〔(天声人語)ラピュタ島のごみ(朝日新聞2 0 2 0年6月3 0日)より抜粋〕

 

まず下線部①から見てみよう。この日本文を見て、ほとんどの受験生が「割合」と「被害」を主語にして書くと思う。つまり、<AはBだ>構文という典型的な日本語構文のままに。しかし、英語は SVO 構文が基本と言うことを念頭に置きながら、この日本文を見直してみると、「割合は少ない」の「割合」が「何の割合かと考えれば、それは「プラスチックにおけるレジ袋の割合」だと分る。また、「割合」という名詞をそのまま名詞いで書いていくと頭でっかちの見苦しい文となる。ここで思い出して欲しいのが受験文法必須表現の account for ~である。つまり日本文は、次のように構文転換すると文法必須表現を使って楽に書けるのである。

 

①前半

 割合は少ないけれど、

 ⇒レジ袋はそのプラスチックの少ない量を占めるが、

 

これを英語にすれば、

 

plastic bags account for a very small amount of the plastic products

 

ここで plastic products としたのは、プラスチックと言っても様々なプラスチック商品があり、その一つがレジ袋だと考えたからである。 the plastic だけでも大丈夫。

 

次に、①文の後半を説明。

 

 レジ袋の被害も深刻だ。

 

この日本語もほとんどの生徒が「被害」を主語にするであろう。だが、①前半で「レジ袋」を主語にしたが、当然、この後半も日本語構文を意識すれば、

 

①文後半書き換え文

 ⇒ レジ袋はその被害が深刻だ。

 

という日本語に典型的な<AはBがCだ>構文だと分る。

 

これを英語はSVOが基本だということを思い出せば、これまた受験英語必須の「被害をもたらす」という cause damage (to ~) 「(~に)被害をもたらす」が使える。

 

①文後半の日本語を構文転換して、それを英語にすれば次のようになる。

 

 レジ袋はその被害が深刻だ。

 ⇒レジ袋は深刻な被害をもたらす

   plastic bags cause serious damage

 

このように書くと、主語が統一され読みやすい英語となる。この短い日本文の中に日本語の視点の移動という特徴があることが分るだろうか。この日本文の隠れ「主題」は「レジ袋」。その「レジ袋」に関して、「割合」、「被害」と視点が移動していく。しかし、英語は「レジ袋」を主語にして、できるだけ統一しようとする。次の訳例と日本語を引き比べ、じっくり日本語構文の特徴を理解して欲しい。

 

①割合は少ないけれど、レジ袋の被害も深刻だ。

 ⇒レジ袋はプラスチック商品の中で少ない割合を占める。しかし、レジ袋は深刻な被害をもたらす。

Plastic bags account for a very small amount of the plastic products, but cause serious damage.

 

次に②文を説明しよう。

 

② 思えば、これまで自分はいったい何枚捨ててきたのだろう。

 

「思えば」は、いろいろな書き方ができるかもしれないが、ここは受験必須表現の「~ということになる」を使ってみたい。When it comes to ~ である。文後半は、時制に気をつけて完了形で素直に書けばよい。ここは構文転換を考える必要はない。次のように英訳すれば良い。

 

When it comes to plastic bags, how many of them have I thrown away so far? 

 

なお、how many だけでも文脈から分るが、of them をつけることによって、「レジ袋を何枚」の意味になる。

 

次に③を説明する。この日本文がまたまた「~すると、AがBだ」構文の(Aが)の省略した形となっていることが分るだろうか。この日本文は、

 

③ その総量を想像すると私は恐くなる。

 

となる。「私が」の代わりに「私は」となっているだけである。これが典型的な日本語構文だと分れば、例によって SVO 構文に転換してみよう。無生物主語構文を思い出してやって欲しい。

 

③ その総量を想像すると私は恐くなる。

     ⇒ その総量を想像することが私を恐くさせる。

 

これを英語にすると、

  Imagining the total amount of them terriffies me.

 

もしくは、make を使って

 

  Imagining the total amount of them makes me terriffied.

 

とできる。.

  

では、最後に④を説明する。④は日本語特有表現の「甘える」が出て来ている。「甘える」に相当するぴったりとした英語表現はない。そこで、文脈によって「子供を甘やかして子供をダメな子にしている」なら、spoil、「人を当てにして甘えている」なら、depend on など適宜訳し分けないといけない。この文脈では、「つけ込む、利用する」の意味で、take advantage of が思い浮かべよいが、「便利なレジ袋を使う」と考えてもよい。

 

④安いから軽いからと便利さに甘え、大量消費してきた社会の負の側面が見えた。

 

まず主語の確定。「安い」「軽い」の主語は前文の「プラスチックゴミ」」であるが、この文章のテーマはレジ袋である。したがって、まず、④文の前半は、次のように理解できる。

 

④' レジ袋は安く、軽いので、その便利さを利用して、レジ袋を私たちは大量消費してきた。

 

これを英訳してみると、次のようになる。

 

Plastic bags are so cheap and light that we have consumed a great amount of them, taking advantage of its convenience.

 

次に④文の後半であるが、これがまたまた「AはBがCだ」構文のバリエーション。「社会の負の側面が見えた」を social negative aspects are seen. では、文前半との繋がりが悪すぎであろう。ここでは「見えた」という自動詞的日本語を「私たちに見させる」、または「思い起こさせる」「思い出させる」とすれば、その「主語」はこの島の大量のレジ袋である。そして、次のように和文和訳すれば、分かり易く、書きやすくなる。

 

④文後半: それら(大量消費したレジ袋)が私たちに社会の負の面を思い出せる。

 

これを英訳すれば、

 

They remind you of socially negative aspects.

 

ここで一言、人称について述べておけば「私たちに」は、もちろん、us としてもよい。ここで、意識的に you を使ったのは、一般的に「私たち一人一人だれでも」の気持ちを一般論として述べる時には、英語は you を使う。英語の人称の使い方は、実は日本語の発想と非常に異なる。折に触れ、言及していく。

 

④文全体を前記のことを念頭に英訳して見るが、再度問題文全体を読みやすいように提示して、その英訳をまとめ直してみよう。

 

割合は少ないけれど、レジ袋の被害も深刻だと。

Plastic bags account for a very small amount of the plastic products, but they  cause serious damage

 

思えば、これまで自分はいったい何枚捨ててきたのだろう

When it comes to plastic bags, how many of them have I thrown away so far? 

 

その総量を想像すると怖くなる。た。

  1) Imagining the total amount of them terriffies me.

     2) Thinking of the total amount of them makes me terriffied.

 

安いから軽いからと便利さに甘え、大量消費してきた社会の負の側面が見えた。

Plastic bags are so cheap and light that we have consumed a great amount of them, taking advantage of its convenience.  The incredibly huge amount of plastic bags on the island reminds you of socially negative aspects.

 

多少、説明のところの英訳と最後にまとめ直した英訳と異なるところがある。なぜ、変えているか。それを考えながら、読んで貰えれば一層効果的だと思う。