2021年阪大英作の(A)を取りあげ、日本語構文から英語構文への転換方法を解説する。この構文転換のコツを覚えると英作は楽になる。急がば回れ。構文転換の重要性を理解し、構文転換の方法を知って欲しい。では、問題と解説・訳例を提示していこう。

 

【問題】

 私が「学ぶことって楽しいな」と思えるようになったのは,大学を卒業して社会に出てからです。

 一度学びの楽しさを味わってからは,やみつきになりました。学べば学ぶほど,いままでわからなかったことがわかるようになり,それによって自分の視野が広がります。知らないことや新しいことに出合うと好奇心が刺激され,もっと多くのことを学びたくなります

(池上彰.2020.『なんのために学ぶのか』SBクリエイティブより一部改変)


下線部第1文の前半部分「 学べば学ぶほど,いままでわからなかったことがわかるようになり」は、受験必須構文を問うている。ここは、〈 the + 比較級、the +比較級〉を出題者の意図に沿って書いてあげたい。ただ、この簡単な日本語のなかにも日本語に特徴的な「述語中心」表現になっていることに注意して欲しい。つまり、「いままでわからなかったことがわかるようになり」の部分であるが、恐らくほとんどの受験生は、come to understand what we haven't known のような書き方をするのではないであろうか。これを 英語構文の基本はSVO であることを意識し、SとOには簡潔な名詞を持ってくれば、書きやすくなるということを知っておきたい。つまり、「分かるようになる」ということは「多くの知識を持つ」ということである。また、日本語では「今まで分からなかったこと」と<述語+こと>という、これも述語中心表現になっているが、英語の名詞を修飾するのは形容詞である。したがって、「今まで分からなかった」というのは、new「しらなかった」 や unfamiliar「よく知らない」を使えばよいと分かる。例えば、「知らなかった単語」「新出単語」は、new words と new を使う。これだけのことを念頭に置きながら、訳例を作ってみる。

 

The more you learn, the more knowledge you have of new or unfamiliar things

 

一言、of new or unfamiliar thingsについて注意しておくと、これは the more knowledge of new or unfamiliar things のひとまとまりの語句が頭でっかちの感があり、of 以下を後にもっていったもの。ここで受験生要注意事項を述べておくと、the more knowledge のように <the more + 名詞>の形を the more と名詞を分離して、名詞を後に持ってくる生徒が多いが、これは文法的に完全に間違いなのでやってはいけない。

 

次に下線部第1文の後半部分、「それによって自分の視野が広がります」を説明する。日本語の典型構文は「~したら(~すると)、AがBする」もしくは「AがBになる」という構文である。ところが、英語はSVOが基本。したがって、この日本語も「それがあなたの視野を広げる」と構文転換する。「視野を広げる」は次のようにいくつか書き方ができるが、一つは自分が使えるものを持っておきたい。

 

1) broaden one's mind 視野を広げる

2) expand one’s mind 視野を広げる

3) broaden one's horizons  視野を広げる

4) enlarge one’s daily horizon. 日常的な視野を広げてくれる。

5) widen one’s horizons 視野を広げる

6) broaden one’s outlook 視野を広げる

7) form broad outlooks    視野を広げる、いろいろな考え方を知る 

8) get a broader view of the world.

    世界に対する視野を広げる

9) expand one’s view of world 視野を広げる、見聞を広げる、

 

ここで注意して欲しいのは、英語の例はすべて「視野を広げる」という他動詞用法になっているが、出題文の日本語は「~すると視野が広がる」と自動詞表現になっていることである。ここに英語と日本語の構文の典型的な違いがある。英語として分かりやすく書くためには、日本語に引きずられずに「それがあなたの視野を広げる」とSVO構文に転換する。すると、文前半を受けて、関係代名詞の which を使えば次のように簡単に書ける。

 

, which broadens your mind.

 

下線部第2文の解説をする。この日本文「知らないことや新しいことに出合うと好奇心が刺激され,もっと多くのことを学びたくなります」も典型的な「~するとAがBする」の構文であることに気づいて欲しい。「知らないことや新しいことに出合うと」の部分をほとんどの受験生は、come across what we  don't know or new things のような書き方をするであろう。だが、ここでも英語は SVO が基本といういうことを想起し、また英文解釈でさんざん練習させられる名詞構文を想起して欲しい。「出合う」という動詞を訳出する必要はないのである。日本語の都合で「述部表現」が頻出するだけであり、英語は名詞表現が頻出することを知っておきたい。そこで、ここでも「~するとAがBする」をSVO構文に転換する。日頃英文解釈で訓練させられている名詞構文の逆バージョンをやれば良いのである。つまり、「知らないことや新しいことがあなたの好奇心を刺激する。その結果あなたにもっと多くのことを学びたい気持ちにさせる」とすれば良いのである。また、「知らないこと」も「新しいこと」も同じことを言っているので、一言 new things で足りる。これを英語にすると、

 

New things stimulate your curiosity, which in turn makes you want to learn more about them. 

 

と書ける。whichの後の in turn は英文解釈頻出表現であることを認識しておいて欲しい。前のことを受け、「そして、今度はそれが~させる」のニュアンスである。

 

最後にもう一度問題文と訳例を掲げておく。

 

【問題】

 私が「学ぶことって楽しいな」と思えるようになったのは,大学を卒業して社会に出てからです。

 一度学びの楽しさを味わってからは,やみつきになりました。学べば学ぶほど,いままでわからなかったことがわかるようになり,それによって自分の視野が広がります。知らないことや新しいことに出合うと好奇心が刺激され,もっと多くのことを学びたくなります

(池上彰.2020.『なんのために学ぶのか』SBクリエイティブより一部改変)

 

【訳例】

The more you learn, the more knowledge you have of new or unfamiliar things. New things stimulate your curiosity, which in turn makes you want to learn more about them.