難関大学英作講座
第8回
(「はがだ」構文と「同格」)
受験生が犯す典型的な間違いの一つ、それが「同格」表現である。日本語が「~は~が~だ」や「~は~だ」構文であるため、<長い連体修飾語+名詞は~だ>構文の文やその逆の<~は+長い連体修飾語+名詞だ>構文が頻出する。たとえば、次のような文だ。
1)テレビの最大の特色は、非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることが可能であるという点にある。
2)最近の傾向としては、自立ということがおおいにもてはやされているように思われる。
3)他人が書いた日記をのぞいてみたくなるのは人間の本性である。
4)近代以降の子育ては、「家庭」という閉ざされた空間で営まれるようになっているのが現実です。
1)と4)の文は「はがだ」構文でもある。
このような日本文を、多くの生徒は次のように書く。
1)The greatest characteristic of TV is a point that S+V
2)The recent trend that S+V is ……
3)… is human nature.
4)It is the fact that the raising of children since the modern times is …..
このように日本語構文そのままに英語を書き始めると、すぐ行き詰る。行く詰るだけではない。不自然で、構文的にも文法的にも間違った文を書いてしまう。では、どうするか。日本語は「はがだ」構文が基本、英語はSVO構文が基本。これを念頭において和文和訳をするのである。
上記の例題の和文和訳例と英語の訳例を出す前に、実際、受験生がどのような英作文を書くか例示しておこう。
<例題>
最近の学生は自分で調べないですぐに教師などに質問してしまう最近の傾向も、単なる怠慢ではなくて、なるべく本に触りたくないからかもしれない。
この日本文がどのような構造になっているか、分かるであろうか。<長い連体修飾語+名詞(最近の傾向)も・・・怠慢だ」の構文である。「も」は「は」のバリエーションである。この文は「怠慢だ」だけで終わらずに、「怠慢ではなくて」とさらに文が続くが、これも次の「はがだ」構文である。
それは学生が本に触りたくないためだ。
この<例題>の生徒の訳例は驚くほど似ている。明らかな文法的間違いは訂正して、典型的な訳例を示してみる。
A trend that students these days ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves may be not because they are lazy but because they don't want to read books.
生徒の書いた訳例がいかに<日本語構文>そのままであるかお分かりであろうか。「~という傾向」を「同格」で書いて、「~という傾向は・・・のためである」という完全な「はだ」構文になっている。日本語構文は本質的に英語構文とは異なるということは無視して、日本語構文をそのまま英語構文にしてよい、という先入観による典型的な間違い英作の例である。
日本語は「~は~だ」構文が主であるために「~という名詞+だ」構文を文法的な意味は何も考えずに「~という=同格」という意識で英作を書いてしまう受験生は多い。しかし、「同格」を使う前に、「これは怪しい!」という習慣を身に付ける必要がある。英語の「同格」と日本語の「~という名詞」構文は全く異質なものだということを意識しておいて欲しい。
では、「はがだ」構文を「和文和訳」してSVO構文の日本語にすればどうなるか。このときいったん「傾向」は括弧に括って、次のようにSVOを意識して和文和訳をする。一つ注意しておくと、「~は~だ」構文が「定義的な文」の場合、A means B. とすると非常に収まりがよい。
最近の学生は自分の知らないことを自分で調べないですぐに教師にそれを質問する。これは彼らが単なる怠慢であるということを意味しているのではなく、なるべく本に触りたくないということを意味している。
この日本語を意識して先の生徒の訳例を書き直してみる。なお、この和文和訳例は、日本語にない「調べる」の目的語相当を補い、「~は・・・だ」の定義文を「~は・・・を意味する」と読み換えている。
Students these days ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves. This means not that they are lazy but that they don't want to read books.
このように、まず日本語をSVO構文の日本文に転換し、その英語を書いてから「ニュアンス」の部分に取りかかるとよい。つまり、次のような赤でマークした部分である。
教師など・・・最近の傾向も、・・・なるべく本に触りたくないからかもしれない。
これらのニュアンスを入れずに上記のままにしておいても十分合格点は貰えると思う。無理に「同格」にもっていって破綻するよりもましである。しかし、ニュアンスが入れられるなら入れるに越したことはない。ではどうするか。
1)「など」 これは日本語独特の婉曲語法であるから、カット。
2)「傾向」
tend to doと動詞形に持っていく方法を覚える。「~の原因は・・・だ」も、A causes B. とSVOにもって行けば簡単だ。この手法は多いに活用すべし。
3)「なるべく・・・しない」 as ~ as S can /possible を考える。
4)「触りたくない」
これは比喩的な表現なので、「読みたくない」とすれば十分である。
5)「かもしれない」 これはmay 一言で済む。
上記の点を加味して生徒の訳例を書き直してみる。
Students these days tend to ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves. This may mean not that they are lazy but that they don't want to read as few books as possible.
まだまだ細かな点で訂正の必要はあっても、「はがだ」構文→SVO構文の日本語に和文和訳→英文、という流れが少しは分かって貰えたであろうか。
では、最初に出した4つの例題について、SVO構文に和文和訳した日本語とその訳例を示しておこう。
1)テレビの最大の特色は、非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることが可能であるという点にある。
→ テレビは非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることができる。
Television can convey the same information to a lot of people at the same time.
これに「特色」「点」などを加味して書き直すが、「特色である」は、A is characterized by B. という動詞的表現を覚えておくと便利。
Television is characterized by the fact that it can convey the same information to a lot of people at the same time.
2)最近の傾向としては、自立ということがおおいにもてはやされているように思われる。
→ 最近、人々は自立ということを非常に重視している。
In recent years, people have been putting much emphasis on independence.
この英文に「傾向」「思われる」を加味すればよい。「もてはやす」は talk a lot about と言ってもよい。
3)他人が書いた日記をのぞいてみたくなるのは人間の本性である。
→ 人間は他人が書いた日記をのぞいてみたくなる。
We want to take a glimpse at a diary which someone else wrote.
これに「本性」を「~せざるを得ない」くらいに読み換えれば次のように書ける。
We cannot help taking a glimpse at a diary which someone else wrote.
4)近代以降の子育ては、「家庭」というと閉ざされた空間で営まれるようになっているのが現実です。
→ 近代以降、実際、親は子供を「家庭」というと閉ざされた空間で育ていている。
In fact, parents have been raising their children in a closed space called the “home” in the modern age.
日本語が「はがだ」構文であることから来る「~という名詞は・・・だ」構文、または「・・・は名詞だ」構文を「同格」で書くことの危険性、そして、それを避けるにSVO構文に和文和訳する重要性が少しは分かって貰えたであろうか。
<今回の要点>
1)「同格」表現に見える「~という名詞だ」構文はSVO構文に和文和訳せよ!
2) 覚えておこう、<名詞⇔動詞>表現
「傾向」→ A tends to do 「~する傾向がある」⇔「Aの傾向は~だ」
「特徴・特色」
→ A is characterized by B.
「AはBによって特徴づけられる」⇔「Aの特徴はBだ」
「原因」
→ A causes B. 「AがBを引き起こす」⇔「Bの原因はAだ」
<参考文献>
Inspirational Proverbs and Sayings Rebecca Milner IBCパブリックス
100 Keys of Love Vicki Bennett & Ian Mathieson IBCパブリックス
→ http://www.ibcpub.co.jp/ladder/level3/9784794600967.html …
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第8回
(「はがだ」構文と「同格」)
受験生が犯す典型的な間違いの一つ、それが「同格」表現である。日本語が「~は~が~だ」や「~は~だ」構文であるため、<長い連体修飾語+名詞は~だ>構文の文やその逆の<~は+長い連体修飾語+名詞だ>構文が頻出する。たとえば、次のような文だ。
1)テレビの最大の特色は、非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることが可能であるという点にある。
2)最近の傾向としては、自立ということがおおいにもてはやされているように思われる。
3)他人が書いた日記をのぞいてみたくなるのは人間の本性である。
4)近代以降の子育ては、「家庭」という閉ざされた空間で営まれるようになっているのが現実です。
1)と4)の文は「はがだ」構文でもある。
このような日本文を、多くの生徒は次のように書く。
1)The greatest characteristic of TV is a point that S+V
2)The recent trend that S+V is ……
3)… is human nature.
4)It is the fact that the raising of children since the modern times is …..
このように日本語構文そのままに英語を書き始めると、すぐ行き詰る。行く詰るだけではない。不自然で、構文的にも文法的にも間違った文を書いてしまう。では、どうするか。日本語は「はがだ」構文が基本、英語はSVO構文が基本。これを念頭において和文和訳をするのである。
上記の例題の和文和訳例と英語の訳例を出す前に、実際、受験生がどのような英作文を書くか例示しておこう。
<例題>
最近の学生は自分で調べないですぐに教師などに質問してしまう最近の傾向も、単なる怠慢ではなくて、なるべく本に触りたくないからかもしれない。
この日本文がどのような構造になっているか、分かるであろうか。<長い連体修飾語+名詞(最近の傾向)も・・・怠慢だ」の構文である。「も」は「は」のバリエーションである。この文は「怠慢だ」だけで終わらずに、「怠慢ではなくて」とさらに文が続くが、これも次の「はがだ」構文である。
それは学生が本に触りたくないためだ。
この<例題>の生徒の訳例は驚くほど似ている。明らかな文法的間違いは訂正して、典型的な訳例を示してみる。
A trend that students these days ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves may be not because they are lazy but because they don't want to read books.
生徒の書いた訳例がいかに<日本語構文>そのままであるかお分かりであろうか。「~という傾向」を「同格」で書いて、「~という傾向は・・・のためである」という完全な「はだ」構文になっている。日本語構文は本質的に英語構文とは異なるということは無視して、日本語構文をそのまま英語構文にしてよい、という先入観による典型的な間違い英作の例である。
日本語は「~は~だ」構文が主であるために「~という名詞+だ」構文を文法的な意味は何も考えずに「~という=同格」という意識で英作を書いてしまう受験生は多い。しかし、「同格」を使う前に、「これは怪しい!」という習慣を身に付ける必要がある。英語の「同格」と日本語の「~という名詞」構文は全く異質なものだということを意識しておいて欲しい。
では、「はがだ」構文を「和文和訳」してSVO構文の日本語にすればどうなるか。このときいったん「傾向」は括弧に括って、次のようにSVOを意識して和文和訳をする。一つ注意しておくと、「~は~だ」構文が「定義的な文」の場合、A means B. とすると非常に収まりがよい。
最近の学生は自分の知らないことを自分で調べないですぐに教師にそれを質問する。これは彼らが単なる怠慢であるということを意味しているのではなく、なるべく本に触りたくないということを意味している。
この日本語を意識して先の生徒の訳例を書き直してみる。なお、この和文和訳例は、日本語にない「調べる」の目的語相当を補い、「~は・・・だ」の定義文を「~は・・・を意味する」と読み換えている。
Students these days ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves. This means not that they are lazy but that they don't want to read books.
このように、まず日本語をSVO構文の日本文に転換し、その英語を書いてから「ニュアンス」の部分に取りかかるとよい。つまり、次のような赤でマークした部分である。
教師など・・・最近の傾向も、・・・なるべく本に触りたくないからかもしれない。
これらのニュアンスを入れずに上記のままにしておいても十分合格点は貰えると思う。無理に「同格」にもっていって破綻するよりもましである。しかし、ニュアンスが入れられるなら入れるに越したことはない。ではどうするか。
1)「など」 これは日本語独特の婉曲語法であるから、カット。
2)「傾向」
tend to doと動詞形に持っていく方法を覚える。「~の原因は・・・だ」も、A causes B. とSVOにもって行けば簡単だ。この手法は多いに活用すべし。
3)「なるべく・・・しない」 as ~ as S can /possible を考える。
4)「触りたくない」
これは比喩的な表現なので、「読みたくない」とすれば十分である。
5)「かもしれない」 これはmay 一言で済む。
上記の点を加味して生徒の訳例を書き直してみる。
Students these days tend to ask their teacher immediately what they don't know without examining it by themselves. This may mean not that they are lazy but that they don't want to read as few books as possible.
まだまだ細かな点で訂正の必要はあっても、「はがだ」構文→SVO構文の日本語に和文和訳→英文、という流れが少しは分かって貰えたであろうか。
では、最初に出した4つの例題について、SVO構文に和文和訳した日本語とその訳例を示しておこう。
1)テレビの最大の特色は、非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることが可能であるという点にある。
→ テレビは非常に多くの人に対して、同時に、同じ情報を伝えることができる。
Television can convey the same information to a lot of people at the same time.
これに「特色」「点」などを加味して書き直すが、「特色である」は、A is characterized by B. という動詞的表現を覚えておくと便利。
Television is characterized by the fact that it can convey the same information to a lot of people at the same time.
2)最近の傾向としては、自立ということがおおいにもてはやされているように思われる。
→ 最近、人々は自立ということを非常に重視している。
In recent years, people have been putting much emphasis on independence.
この英文に「傾向」「思われる」を加味すればよい。「もてはやす」は talk a lot about と言ってもよい。
3)他人が書いた日記をのぞいてみたくなるのは人間の本性である。
→ 人間は他人が書いた日記をのぞいてみたくなる。
We want to take a glimpse at a diary which someone else wrote.
これに「本性」を「~せざるを得ない」くらいに読み換えれば次のように書ける。
We cannot help taking a glimpse at a diary which someone else wrote.
4)近代以降の子育ては、「家庭」というと閉ざされた空間で営まれるようになっているのが現実です。
→ 近代以降、実際、親は子供を「家庭」というと閉ざされた空間で育ていている。
In fact, parents have been raising their children in a closed space called the “home” in the modern age.
日本語が「はがだ」構文であることから来る「~という名詞は・・・だ」構文、または「・・・は名詞だ」構文を「同格」で書くことの危険性、そして、それを避けるにSVO構文に和文和訳する重要性が少しは分かって貰えたであろうか。
<今回の要点>
1)「同格」表現に見える「~という名詞だ」構文はSVO構文に和文和訳せよ!
2) 覚えておこう、<名詞⇔動詞>表現
「傾向」→ A tends to do 「~する傾向がある」⇔「Aの傾向は~だ」
「特徴・特色」
→ A is characterized by B.
「AはBによって特徴づけられる」⇔「Aの特徴はBだ」
「原因」
→ A causes B. 「AがBを引き起こす」⇔「Bの原因はAだ」
<参考文献>
Inspirational Proverbs and Sayings Rebecca Milner IBCパブリックス
100 Keys of Love Vicki Bennett & Ian Mathieson IBCパブリックス
→ http://www.ibcpub.co.jp/ladder/level3/9784794600967.html …
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