自分の学んでいるToxicologyとはちょっと趣旨がずれるが、中毒という言葉は毒物により生体の組織や機能が障害を起こすこと以外に、比喩的にある物事がたまらなく好きで抜け出せない状態の時にも使われる。

かなりのこじつけになるが、自分がたまらなく好きなものを時々書いていこうと思う。
アメリカに最初に来たころ、知り合いとSouthparkというCartoonの映画、Blame Canadaというものを見た、というか見させられた。来たばかりで、アメリカのいろんな文化を吸収してやろうと思っていた私には非常にShockingな映画であった。
まず、メインのキャラクター達はコロラドのSouthparkという町に住む小学生なのだが、とてつもなく性格が悪い。言葉が悪いだけでなく、態度も悪い。特に、Cartman という太っちょの男の子は、生まれついての悪である。その上、周りの大人たちも、性転換をしたゲイ教師やらが出てきて、どう考えても子供のために作られたものではない。

私は漫画やコミックは本来子供のためのものだと思っていた。多分、日本では子供に目に付くような漫画やコミックは皆子供向けであろう。ところが、アメリカのコミックの定義は違うようである。Southparkを筆頭に、常識からはずれ、道徳的にどう考えてもおかしいようなCartoonが、夜TVで頻繁に流されている。
だが、これらのCartoonにもちゃんとしたポイントがある。それは社会問題などをとりあげ、皮肉っているところである。Family guyや、King of the Hill,いってしまえばSimpsonsなどもはっきりいって大人向けのCartoonであろう。

最近見たSouthparkでこんなエピソードがあった。
悪児Cartmanと比較的普通なKyle(かStan,どっちだったかよく覚えていない)は、Cartmanのおじさんのボートに乗って湖で遊んでいた。
Cartmanはおじさんはいつもここに鍵を隠すといって鍵を取り出し、Kyleに運転してみろという。何かあれば自分が責任を取るというCartmanの言葉を信じ、恐れながらKyleはエンジンをかけるが、コントロールがとれず、湖の端っこにあったビーバーが作ったダムに突っ込み、ダムを壊してしまった。
ボートは燃え上がり、なんとか岸まで泳いだところでCartmanが実はまったく知らない人のボートだったことを白状する。CartmanはKyleがとんでもないことをしでかしたといい、責任をなすりつける。もう一度いうが、2人は小学生である。
CartmanはKyleを促し、その場から逃げる。

そのダムは実はビーバートンという町にそのダムの水が流れ出るのを防ぐ役割をしており、そのダムが壊れたため、ビーバートンは洪水に襲われ、それが大ニュースとしてテレビで流れる。Kyleは自分のしたことがばれるのではとびくびくするが、Cartmanは知らんふり。
そんな中、科学者達がその洪水の原因は地球温暖化だと発表する。そしてその温暖化はTwo days before the day after tomorrow (つまり今日・・)に地球を襲うと警告する。
それを聞いた人たちはパニックに陥り、今まで科学者が警告してきたことを聞かなかったせいだと言って嘆き、避難するために家を出る。もちろんビーバートンの人たちをほったらかしにしてである。

避難した人たちは学校の体育館などにこもり、外に出れば温暖化のせいで死ぬと思い込む。Kyleは自分のしたことの重さに耐えられず、ビーバートンに取り残されている人たちをCartmanをつれて助けに行こうとする。
2人を助け出そうと出動した警察官達は、外に出ても大丈夫だったので、温暖化は終わったと宣言し、皆が外に出てくる。そこでKyleは自分がダムを壊したのだと白状する。
ところが皆、それはKyleが温暖化に加担した一人だという意味で言ったと勘違いし、皆が自分もダムを壊したと口々にいい始める。それに便乗するように楽しそうにCartmanは自分はダムを壊したと白状する。もちろん誰にも責められることなくである。

このエピソードの題名は”Two Days Before the Day After Tomorrow"である。もう何を皮肉っているかはわかるであろう。Day After Tomorrowというアメリカでは評判の悪かった映画を皮肉っているのである。
ところが、このエピソードは同時に他のものも皮肉っている。
アメリカ南東部を襲ったハリケーンKatrina。被害が大きく、そのすぐ後に来たRitaのときは、誰もが神経質になり、Katrinaで得た教訓を!といい、沢山の人が避難した。
避難したはいいが、実際避難して難を逃れたのはほんの一部で、軌道をかえたRitaは避難した多くの人たちの家に被害をほとんど出さなかった。また、避難する際に効率が悪かったため、ものすごい交通渋滞を巻き起こした。このエピソードはそのKatrinaで判断の鈍った科学者や政府を皮肉っている。

道徳的な教訓はまったくないにしろ、いろいろな社会問題をここまで面白おかしく表現できるSouthparkの大ファンにいつの間にかなってしまった。確かに下品で、子供にはとてもではないが見せられない。
Southparkがわかるようになり、楽しいと思うようになれば、あなたもかなり長い間アメリカにいるのではないか。自由の国アメリカは、日本より大人中心に回っているように思える。



毒、毒物の定義を辞書で調べると、「生物にとって不都合を起こす化合物の総称」とある。
随分大雑把な定義であるが、必ずしも「死」に至る物だけを毒と呼ぶわけではないことに注意していだだきたい。環境ホルモンは一昔前に随分騒がれた物質だが、精子の数が減ったり種の保存のために正常に働けなくなるするこの物質ももちろん毒物である。

毒は英語でなんというか?PoisonとToxinを思い浮かべる方がいるだろう。違いはなんだろう?
はっきりと使い分けられているわけではないが、定義としては分子レベルで化学反応の結果生物に怪我、病気、死を引き起こす物をPoison、自然界に存在し、少量で生物を死に至らしめる物質をToxinと呼ぶようだ。
他に、動物が噛んだり刺したりすることによって発せられる毒をVenomと呼ぶ。

ここに、毒をカテゴリー別に大きく分けてみる。
1.動物毒、植物毒 (蛇、クモ、サソリ、ハチ、アリ、蛙、フグ、クラゲ、キノコ、コカ、ケシ、タバコなど)
2.微生物毒 (ボツリヌス、コレラ、ジフテリア、マイシンなど)
3.重金属毒 (水銀、カドミウム、鉛、ヒ素、アスベストなど)
4.有機化合物 (PCB, 塩ビモノマー、ダイオキシン、DDTなど)
5.ガス毒 (塩素ガス、一酸化炭素ガス、神経ガスなど)

これから色々な毒を取り上げていくが、毒というものは本当に一部にとどまらず、範囲が広い。
歴史的にも錬金術や医学に関連が深いし、ローマの皇帝ネロなどが異常な行動を起こしたのは、当時ワインを鉛のジョッキで飲んでいたからだという人もいる(鉛がワインに溶け出し、鉛中毒になった)。

毒を毒で制すというように、毒は薬になる。人を死に至らしめるほどではないがまガエルの毒、がまは昔からがまの油として漢方薬であった。毒と薬の違いは、人の体の中を通過する際にいい影響を及ぼすか、悪い影響を与えるかの違いでしかない。それもまた、個人によって変わってもくる。

毒は社会問題に上ることも多い。公害問題で一躍有名になったのはイタイイタイ病の原因であったカドミウム、水俣病の原因であった有機水銀など。オウム真理教が使ったサリンや、林被告が使ったとされるヒ素、生物兵器としてテロリストに使われた炭疽菌などはすべてよく名の通った毒物である。そして最悪の場合、戦争に使われる。ドイツ軍が第一次世界大戦に使った塩素ガスや、イペリットなどの毒ガスは有名である。

環境問題としても、毒は話題に上る。ダイオキシンやPCB、殺虫剤として使われていたDDTなどは知らない方はあまりいないだろう。現在私が興味のある毒はこの種の毒である。今、私たちの周りには何万という化学物質があふれていて、私たちはその一つ一つについて自分達や子孫にどの程度影響があるのかほとんど知らない。どこにいても何を食べても、もう自分達の体の中に、汚染物質がたまっているのだ。

なんだかやはり毒の話をすると、暗くて重いブログになりそうなので、次は多少力を抜いて自分の生活の中から話題を探そう。






2004年、5月に卒業して9月に大学院へ行くために戻って来るまでの間に、日本でビザの更新をした。
その時に”毒や化学薬品、生物兵器系の知識はありますか?” という質問が用紙にあって驚いた。

NYでのテロの後にできた質問事項なのだろうが、まあそういう知識(?)をつけるのは大学院に行ってからだから今のところNoであろうと思ったが、実際に今度ビザを取るときになってYesと書いたら尋問にでもあうのだろうかと思った。

現在大学院2年。Toxicologyという分野がどういう分野であるかを知らない人にそれを勉強しているというと、
てっきりどんなに恐ろしい毒を研究開発しているのかと誤解されることが多い。そんな研究を大学が公認でやるわけがない。もちろん、どうやったら毒から人間や生き物を守れるかという研究をしているに決まっているのだ。決して私がサリンやら炭疽菌などを作れるなどとは考えないで頂きたい。

毒というと、蛇やサソリ、ふぐなどの毒を思い浮かべる人が多いかと思うが、実はスイスの医師であり、錬金術師でもあったパラケルススが言ったように”Dose makes poison"(毒は薬なり)といい、量によって普段何気なく使ったり食べたりしているものでも、毒になりえるのである。たとえば塩。普段料理に欠かせないが、もちろん人間の体にも欠かせない。けれど取り過ぎれば高血圧になりうる。ワインなどのアルコールであってもある程度の量が体にいいのであって、取り過ぎは”毒”なのである。まあ、当たり前のように言われてきたDose makes poisonの定義の当てはまらないものも今は見つかっているが。

ところでこのブログは3つのことを目的として作られた。
1.初心者毒性学者(自分)がより広い知識を身につけるため。そして専門用語の日本語を調べる機会とするため・・・。
2.毒性学の楽しさを人に知ってもらうため。
3.んー、for fun?
ということで、1の目的のために、多少専門的になることもあるかと思うけれど、その辺はご了承を。なるべく楽しく説明して2の目的を果たすようにするので・・・。

このブログを始めるのには随分考えさせられた。テロが多い今日、毒の知識などをひけらかしてよいものか・・・。けれどまあ、毒といってもものすごく幅広いし、結局テロに貢献するようなサリンなどを作る知識ははっきりいって毒性学ではなく、化学の分野だと思う。そして炭疽菌などの知識はウイルス学やら微生物学。なので自分にそのような知識は残念ながら持ち合わせていない。

ということで(?)、幅広く毒の面白さを語っていきたいのでよろしく。
紹介して欲しい毒や薬があれば意見を下さい。