シャコンヌと言えばバッハの二短調パルティータ。この無伴奏の大傑作はヴァイオリン音楽における金字塔であり、他の追随を許さないと思う。

でも、それとは別に溺愛している「シャコンヌ」がある。それがヴィターリの作品。



この動画はシェリングのもの。シェリングといえばバッハのシャコンヌも非常なる名演があって、いわゆる「名盤」リストには欠かせないものだろう。しかしこちらのシャコンヌも素晴らしい。

ヴィターリのシャコンヌはハイフェッツの演奏を良く聴いていた。あるときは快刀乱麻を断ち、あるときは闇夜を切り裂く稲妻のように冴え渡り、またあるときは天馬空を行くように駆け抜けていくハイフェッツを。

でも、深夜に独り仕事を終え、さまざまな出来事に思いを巡らし、中也だったら「ああ、おまえはいったい これまで何をしてきたのかと 吹くふるさとの風がいふ」とでも表現したであろう虚無感にさいなまれるとき、私はシェリングのシャコンヌに癒される。

この、エスプレッシーヴォな音楽に。