好きなミステリを何点か挙げろと言われたら、真っ先に思い浮かぶ作品がいくつかある。その中のひとつ、ウィリアム・アイリッシュ作「幻の女」について紹介しよう。


なんと言っても、文体が素晴ら しい。冒頭の一文は、これだけでこの作品を不朽のものにしている。




The night was young,and so was he. But the night was sweet,and he was sour.



これを日本語に訳すと、こうなる。



夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった  

                                  (稲葉明雄訳)



ストーリーは・・


その日、彼はただ一人街をさまよっていた。バーに立ち寄ると、奇妙な帽子をかぶった女に会った。形も、大きさも、色までカボチャそっくりなオレンジ色の帽子だった。


彼はその女を誘ってレストランで食事をし、カジノに行き、酒を飲んで別れた。


家に帰ってみると、ケンカ別れしたまま家に残してきた妻が、首に彼のネクタイを巻き付けて絞殺されていた・・・。


彼は逮捕される。そして刻々とせまる死刑執行の日。唯一の目撃者、”幻の女”はどこに・・・?



こんな感じ。裏表紙の紹介文を少し書き換えて紹介した。ミステリ好きならとっくに読んでいるはずだけど、読書好きで、あまりミステリに食指が動かないというような方がいたら、ぜひこの作品をお薦めしたい。