美しい女性を描いた肖像画は数々ある。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、ルノアールの「イレーヌ・カーン・ダンベール嬢」、ミュシャの「シュラーヴィア」、ヴィンターハルターの「皇妃エリザベート」などなど。


しかし私がどれか一つを選ぶとしたら、ジョージ・ロムニーの「キルケに扮したハミルトン夫人」を挙げるだろう。



ランボー、クレー、モーツァルト あるいは不思議の環-エマ・ハート


ハミルトン夫人は本名「エイミー・ライアン」。のちに「エマ・ハート」と名乗り、ナポリ大使のウィリアム・ハミルトンと結婚してからは、ハミルトン夫人となった。


ハミルトン氏は、こう言ったという。「彼女はこの世のなにものよりも素晴らしい。その独自の美しさに匹敵するものは、古代の芸術にも見あたらない」。


ちなみにキルケとはギリシア神話に登場する魔女。気に入った男を養い、飽きると魔法で男たちを獣に変えてしまう。

エマは英国海軍ネルソン提督の公然の愛人となり、ハミルトン氏もそれを認めていた。ネルソンとエマが永遠の愛を誓って交換したリングが、英国の国立海洋博物館に展示されている。



ランボー、クレー、モーツァルト あるいは不思議の環-エマとネルソン