夫が一人旅から帰ってきた。

「お土産だよ」とお菓子を持って、帰ってきた。


玄関には、夫の旅行バッグがひっくり返ったままになっている。

私は、そのバッグの中からとび出している旅行の洗濯物をつまみ上げる。

パンツくらい自分で洗濯機に入れなさいよ・・・


ふと、バッグの中に白い小さな紙袋があるのが目に入った。


覗き込んでみると、紙袋の中身は赤いお守りだった。

安産祈願と書いてある。


そういえば、夫は超有名な神社にも立ち寄ったと話していたっけ。

縁結びで有名なその神社で、夫は安産祈願のお守りを買っていた。


紙袋の中のお守りを見ていたら、私はしみじみと悲しくなってきた。

・・・安産祈願って何?


私はもう長いあいだ妊娠ができていない。

このままずっと、妊娠できないのかもしれない。


なのに、安産祈願って、なんのプレッシャーよ?

私には、永遠に必要ないかもしれないのに、何で安産祈願?


私は、静かにそっとお守りをバッグに戻した。

これは、見なかったことにしよう。

夫には買いたいものを買う権利がある。

買いたかったならば買えば良い。


そして次の日。


リビングでソファに座っていた私は、思いついたように突然立ち上がる。

まだ玄関で出しっぱなしにされている夫のバックに、つかつかと歩み寄った。


私は、そのバッグからやおらお守りを取り出すと

一直線に洗面所へ行き、そのままゴミ箱へ叩き込んだ。


もう!!!安産祈願って!!プレッシャーかけないでよ!!

私は安産祈願をもらえない人なのに!!

安産祈願なんて、私には永遠に必要ないかもしれないのに!!


勢い良く叩き込んだら、今度は涙がぶわーーーーっと溢れてきた。

私は逃げるように玄関に戻ってきて、泣き続けた。


ゴミ箱の底の赤いお守り。

刺繍の入った小さなお守り。


神様、せっかくのお守りをゴミ箱なんかに入れたら、バチがあたりますか?

ぁ、神社の関係は、神様ではなく観音様でしょうか。←宗教について知識が皆無。


神様 仏様 観音様、お守りを乱暴に扱って、すみませんでした。


夫よ、いつまでも安産祈願が必要ない妻で、ごめん。

産めない私でごめん。

怒って泣く私でごめん。