2020年、元旦。
その日のことが、虎キチくんブログに記されています。
なんの心配もしていない気楽さと、のんびりとした幸福感が漂う記事です。
おとうさんは、昨年の年末にお会いしたときから、お正月のご馳走を楽しみになさっていました。
お楽しみのご馳走は、大喜びでぺろりと平らげてしまいました。
そのあまりの速さに、虎キチくんは笑っていました。
ちょうどおかあさんも虎キチくんも席を外していて、おとうさんと私の二人きりだったとき、
おとうさんが、ベッドに横たわって、猫ちゃん猫ちゃん、と手招きしました。
何か言いたげな表情なので、なんだろう?と顔を寄せますと、おとうさん、
「隣のジイさんの、イビキがうるせえの」
そうおっしゃってにっこりほほえまれました。
そんなどうでもいいことを言うために、顔をわざわざ近づけさせる、けっこうお茶目でスケベなところもお持ちの、かわいいおとうさん。
思わず私も、笑っていました。
この時に、想像もできるはずありません。
おとうさんが、そののちほんの二週間ほどで、体調を崩して、口もきけず、食事も取れず、大好きなテレビもご覧になれなくなるなんて。
意識不明で昏睡なさってしまうだなんて。
急激に容態の悪化したおとうさん。
私たちに告げられたのは、
肺がん、
この診断でした。
つゞく。