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「俺は、一生モラ美を大切にする。何があっても、モラ美のことは見捨てない。
いつだって、モラ美を第一に優先する。それは、猫ちゃんと一緒になってもそうする。
悪いけどさ、俺あの人と猫ちゃんだったらあの人を大事にするから。この先もずっと。当たり前だろ?
あの人こそ本当の孤独でさみしい人だよ。そんな人を見捨てられるはずないだろ……」
淡々とした抑揚に乏しい声色で、しかしたっぷりの憎悪と悪意を込めて、虎キチは静かに話し続けていました。私はただそれを、静かに泣きながら、聞いていました。
「オラオラ系が好きとか言ってたけど、そんな、優しさのない男なんて、カスだよ。俺は優しさや思いやりのない男にはなりたくないから。
あの人を見捨てるつもりで俺は離婚するわけじゃない。面倒はずっとみていく。
猫ちゃんの理想の男にはなれないよ、理想押し付けてこられても困るよ。俺は俺だから、ふざけんなよ。俺はやりたいようにしていくから」
本人が思っているように、「私に対する感情がない」のではないのは明白でした。
明らかに私に憎しみや悪意をぶつける意図がありました。
これは一種の反動形成であって、虎キチは「モラ美を寄生させた」自分を「モラ美も一緒に」受け入れて欲しかったのにそれを拒否されてしまったとして、私を憎んでいるということです。
だから、過剰なまでに「俺ごとモラ美を受け入れろ」と強調しているのです。
苦痛でした。
だってそんな要求飲めるわけありません!
結婚は二人でするものです!
三人でするものではありません!
しかし同時に私にはわかっていました。
今の虎キチには何を言っても、
無駄。
すべて、黙って受けとめていくしかないのです。
涙が次々にこぼれてきます。
「まあ、猫ちゃんが望むなら結婚はします。俺はもう正直どっちでもいい。
色々とね、嫌になったんだよね。
予定通り引っ越しもします。そっちだって家を出る予定立ててるんだからね」
「ホンマに……ごめんなさい……」
「もういいよ。とにかく謝っとけみたいなの俺好きじゃないのよ」
「そんなじゃないよ、とにかく……言葉がダメで行動でしか信頼は回復できないなら今後の行動で見てもらうから」
「ああそう、あんまり期待はしないよ。まだなにか話したい?」
「ううん、もういいよ」
虎キチがなにを私に言わせたいのか、気づいていましたが言いたくありませんでした。
「わかった、私もモラ美さんを大事にするね。虎キチくんの優しさを尊重するよ」
それは優しさではないし、私はモラ美など全く大事にしたくありません!
虎キチの気持ちがわかりながらも、私は虎キチの都合に合わせることを拒みました。
だって、
その言葉に同調するなら私は彼らの狂気と妄想を共有することになる!
どうしたらいいのか分からず、電話を切ったあとにも絶望感からの嗚咽が止まりませんでした。