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子どもを口実にして、
これまでとほとんど変わらない生活を続けることを虎キチに約束させたモラ美。
その点がわかってからというもの、ほかにもいろいろと首をひねることがありましたが合点がいきました。
モラ美は、行くところがないと虎キチに泣いて訴えていました。虎キチが、実家が無理なら俺の実家に置いてもらえばどうか、と提案しても渋り(恐るべき提案!)公営団地の申し込みにもあまり積極的ではありません。
維持費がかかると思うから勧められないけど、あの家に住み続けたいみたい。なんで手放さないんだろう。
虎キチの口からはそう聞いていました。
シンママでその家に住み続けるのであれば、出来れば正社員で仕事を探したいところです。幸いにもモラ美はとある国家資格を持っていて、正社員でも仕事を探せば見つかると思われました。
しかし、モラ美はパートの仕事を決めてしまいました。
アイツ大丈夫かなと虎キチは首をひねっていました。
離婚後も、旧姓には戻さないと聞きました。
こういうことです。
モラ美は、
「虎キチの勝手な都合で一時的に離婚はしたものの、
どうせすぐに私と再婚し直すに違いない、
だってこっちには子どもが居るんだから当然だ!」
と、思っていたのです。
だから、すべてのものを同じ形で留めておきたいのです。
モラ美的には、
離婚に応じてやった、女(私のこと)と夜を過ごすことを許してやった、
充分だろ!
くらいの気持ちしかないのです!
私の頭をよぎった言葉。
慰謝料返せ!
慰謝料は、受けた被害(この場合精神的被害と経済的被害)に応じて、その慰謝を目的として支払われているはずです。
それを受け取ったなら、こちら側の「ごめんなさい」という謝意に、相手側の「わかったよ」という無言の合意を示しているはずなのです。
慰謝料受け取っておきながらなにもかも手離す気がないってどういうことだよ!?
その金は、アンタとの手切れ金じゃないか!
虎キチは、全財産を投げうち、借金してまでアンタからの自由を買い取ったんだ!
私との新しい人生を買い取ったんだ!
もうやめろ!
手離せ!!
私は、口先ではアンタなんかに興味がないとうそぶきながら、虎キチに渾身の力でしがみつき、爪を立てて離すまいとしている鬼婆のような女を想像して吐き気を催しました。
虎キチは済まなさそうに言いました。
「まあ、俺はとにかく子どもは一番優先で考えてあげたいんだ。
アイツとにかく繊細な子だから、急にパパが居なくなるなんてことになったら心が壊れちゃうかもしれないんだ」
それは、本当にあなたの考えなのか。
誰かの言葉を丸呑みしているだけじゃないのかと、私は心でつぶやきました。
「アイツももう自分ちに俺を上げたくはないって言ってる。その時にはもう自分以外の女抱いた男だし汚らわしいって。でも、子どものために我慢するってさ」
それは、本当にそうなのか、あなたはその言葉を、なぜ疑わないのか。
私は心でつぶやきました。