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離婚。
実は、この言葉、
私たちの会話では、それまで一度も、登ったことのない単語でした。
避けに避けてきたとも言える、タブーだった単語でした。
誠実で、ウソの嫌いな虎キチは、離婚する気もないのに、そうした言葉をチラつかせるような男ではありません。
この言葉を口にすることは、私に対する気がとがめるし、その意志もないのにこうした感情を育てている自分への責め苦ともなります。
無理で、不可能、それは夢、だからあえて口にしない。虎キチの気持ちとしてはそうでした。
私にとっても、虎キチのそうした感情くらい理解しているつもりでした。
どんなものかはよく知らないけど、家庭のある男だし。
(妻の情報がかなり累積してきていたので、実はかなり問題ある夫婦仲だなとは感じていました)
それに、楽しい二人の時間に、そんな言葉を突きつけるのは野蛮な行為のようにも思えます。
しかし、虎キチはついに、その言葉を口にしてしまいました。
しかも、将来的に実現させる目標として。
この時の、虎キチの考えは、こうでした。
高校一年生のお兄ちゃんは、もうすぐ卒業するけど、下の小学一年生の弟くんはとても気の優しい、感受性豊かな子なので、この子については傷つけたくない。
この弟くんの成長の様子を見ながら話は進めたい。
今はパパ、ママ、って感じだけど、将来、親父離れしてきたら、状況によっては、離婚できる。
ただ、片親ではなれない職業やつかめない夢もあるから、最悪弟くんの成人まで待たせるかもしれない。
でも、お前と一緒になりたい、俺は。
私ですか?
正直、当惑です。
私は、不倫常習犯でしたが、足を洗ったはずでした。
今までしてきたどの不倫も、バレず壊さずだったことが唯一の救いだったのです。
なのに、
またも、
してしまうのか?
愛着障害のある私が初めてまともに愛せた男。
この人を失ったら、もう誰も愛せないだろう。
離婚。
虎キチの妻になれると思ってもみなかった私だけれど、結婚できるともなれば、正直心は揺り動かされます。
結婚なんてしたくなかった。
でも、
相手がこの男なら!
ですが、脳裏によぎるのです。
過去不倫相手の、見すぼらしすぎた奥さんの姿が。
誰にも、迷惑はかけず、誰からもなにも奪いたくなかった。
なのに、その私が、性懲りもなく、
またやるのか。
しかも今度は必ず破壊が伴うとわかっているのに。
虎キチの話す内容に、私は、良いも悪いも言わずに、ただただ、黙って聞いていました。
そうしようとも、それはいけないとも、言えなかった。
そんな私たちの状況が、一転して怒涛の展開に押し流されたのは、
8月29日に、虎キチ家族に起こった、ある事件がキッカケになりました。