虎キチのこと ③ | 泥棒猫の言い分

泥棒猫の言い分

愛した人を略奪しました。

度を越したモラハラ女と結婚してしまい、離婚も事情により難しかった虎キチ。

ぶっ壊れそうな自分を守るためには、

 

不倫しかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

夫を全くまともに愛さないくせに、執着心はケタ外れだった妻は、虎キチをとにかく独占したがった。

 

 

ショップ店員など通りすがりの女性と話しただけでモラハラを爆発させる、母親と必要上のやり取りをしただけでマザコンだと罵られる、飼っている犬を可愛がっただけで不機嫌になる、友達を家に連れてくると聞こえよがしな暴言を吐いて帰らせようとする、友達と出かけるときには1時間ごとに写メを遅れと命令する、一人でどこかに出かけるときは必ずついてくる……。

(もちろんこんな人なので友だちはいないから、彼女が単独で出かけることはない)

おそらく、子どもを虐待したのも、虎キチが子どもを愛して育てようとしていたからだろう。自分以外の何かや誰かに、虎キチが関心を示すのに、彼女は極端に腹を立てた。子どもが二人とも男の子でまだ、良かったと言える。もしにも女の子であれば、本当に殺されていたかもしれない。

 

 

 

 

 

彼女は、

なんの根拠もなく、

 

「女居るんだろ!」

 

「知ってんだからな!」

 

どれだけ否定しても、子どもの前であっても言い続けた。

携帯のアドレス全消しさせられたことが二度、ミクシイなどのコミュニティを退会させられたことが二度。

ちょっと数分コンビニに行ってきただけで、

 

「女と会ってたんだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

何年もこれを続けられて、限界を迎えた虎キチ。

異常な監視と過干渉に、窒息しそうだった。

 

 

 

女が居ようと居なかろうと、被害妄想でアイツはずっと言い続ける。

信じてもらうなんて、無理だ。

 

だったら本当に彼女を作ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

初めての不倫。

 

彼女は独身で一人暮らし。

口数の少ない優しい女だった。

 

怒鳴ったり、ヒステリーを起こしたり、暴言を吐いたり、泣いて言うことを聞かせようとする妻と違って、彼女はおっとりとした、ゆっくり話す、静かな人だった。

虎キチはSEXを求めていたんじゃなかった。SEXは妻が週に一度は要求していたから。

彼女は、とにかく癒された。

日帰り出張との名目で、彼女とは月に一度、彼女の家で過ごした。

3年ほど、続いた。

 

 

 

「奥さんか、私か、選んでよ」

ついに、彼女が勝負に出た。

 

 

 

 

 

妻のことは、とっくの昔に愛など尽きてる。

彼女のことは、可愛いし、好きだと思ってる。

 

でも、

彼女はしょせん、

妻とやっていくための、安全弁として必要だった存在。

結局のところ、

虎キチにとっては、

 

妻とやっていくのが大前提。

 

だった。

 

 

 

 

 

 

終わりを告げると、彼女は豹変した。

 

「私、今まで我慢してたけど、あなたのこういうところ、嫌いだったんだから」

 

延々と、彼女は、不平不満をぶちまけ、虎キチのもとを離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

虎キチは、この時から、ストレス障害を抱えた。

睡眠障害になり、睡眠薬が欠かせなくなった。

女性不信にもなった。

もう恋なんか、しない。

誰も、信じられない。

妻との関係も、変わった。

妻を怒らせないよう、妻の機嫌がいいように、ひたすらに妻の言うなりになって、妻に逆らわず、徹底的に自分を殺して生きていくことにした。

 

「下の子が、成人したら、死にたい」

 

これが、虎キチの口ぐせになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでが、虎キチの道のりです。

虎キチが泥棒猫、つまり、私と出会うのは、彼女と別れてから、さらに3年ほどあとのことになるのです。