ドロドロ。   ~第2話~ | ドロドロ。         ・・・・・・・・小説・・・・・・・・

ドロドロ。   ~第2話~

卒業式。

生徒代表が教師に送る言葉を発している。
スピーカーから響く微かなハウリングの音に不快感を覚える。
イコライザーが狂っている。
正しい周波数をカット出来ていない。
後ろにミキサーを構えて座っている人は何の為にこの体育館に存在するのか。
ただ、音を出せば良いと思っているのだろうか。

「ハヤクオワレ」

心の中で呪文の様に繰り返す。
このまま体にハウリングを受け続けると自分の存在をかき消される様な気がしてならない。
耳から侵入し脳を刺激する。
脳が指示を出し私の体を消し去っていく。
誰か助けて。
少しの立ちくらみと格闘していると急に拍手の音が体育館に響き渡った。
もうすぐ外へ出られる。

外の空気は気持ちよすぎた。
冷え切った空気が私の頬を直撃する。
生き返る。
大阪の空気はとてもじゃないが綺麗とは言えない。
だけど冷え切った空気は私をリセットしてくれる。
「頭を冷やす」正しくその言葉通りだ。

「よっ!咲子!何ほけーとしとんねん」

頭を軽くぶたれ私は我に帰る。

「良い空気やなと思って」

「おいおい。ここ大阪でしかも東大阪やで?大阪の中でも最も空気が悪い場所やで?」

「英樹にはわからん」

方向を向きなおして歩き出す私の半歩後ろを英樹がついて来る。

「俺ら中学校違うしもうお別れやな」

「そやね」

「それだけ?お前は相変わらず無愛想やなぁ。もっと寂しいわぁとか可愛い事言われへんわけ?」

私は立ち止まった。
急に立ち止まった私にぶつかりそうになっている英樹の方へ向きなおした。

「英樹に話ある」

「なんやねん突然歩き出したり立ち止まったり。もしかして愛の告白だったりして」

ちゃらちゃらしている様に見える英樹。
しかし彼ならきっと聞いてくれるそして解ってくれる。
そう思えた。

英樹は同じマンションに住む幼馴染だ。
しかし同じ中学には行かない。
何故なら英樹は優秀だからだ。
頭の悪い私とは違う。

「自分が自分じゃ無くなる感覚って解る?」

「自分が自分じゃ無くなる感覚?」

「うん。そう。例えば今、自分に物凄く嫌な出来事が降りかかったとするやん?そんな時にこの嫌な出来事は私に起こっているのではなく他の人物に起こっているのだと思い込む事。そしたらね、本当に自分じゃなくなるの。これって多重人格ってやつなんだと思うけどそれとは少し違うの。」

「少し違う?」

「うん。どう違うかと言うとね、自分じゃない人間になっている時に元の自分の意識もしっかりあるの。例えば私が15歳の人間になった時にちゃんと12歳の私が上から見てるの。そして15歳の私を操作するの。うーん、なんていったらいいかな・・・・。」

「咲子は自分の人生を行き来してるって事?15歳の咲子になったり5歳の咲子になったり20歳の咲子になったり?」

「そうそう。でもね実年齢より下がる事はないねん。」

いきなりの話に英樹は動揺するわけでもバカにする訳でもなく幼少の頃の体験を話し出した。

「俺さ、幽体離脱した事があるねん。寝ている自分を上から見下ろしてる自分。空を飛び回る自分。どれも本当で体が風にあたる感触も残ってた。多分、咲子のは多重人格というより幽体離脱の方が近いのかもな。」

気持ちが軽くなった。
この会話を出来る人間を慎重に探していた。
英樹で良かった。
心からそう思う。

「ありがとう。行こう!」

と言うと私は英樹の腕を引っ張って小学校の門をくぐった。
英樹と顔を合わせて出来るだけ大きな声で叫んだ。

「卒業おめでとう!」


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