残念な「真夏の方程式」 | 沈みかけ泥舟のメモ

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文庫版「真夏の方程式」が発売されたので
改めて文庫版の「容疑者Xの献身」「聖女の救済」と読み比べてみました。

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「真夏の方程式」はやはり他の二作品と比べると劣ります。
映画版「真夏の方程式」のサイトでは
「一番の感動作」「傑作」と書いてますが
すでに映画になった「容疑者Xの献身」の方が明らかに上です。
宣伝のためとはいえ事実を曲げて大げさに書くのはどうなんでしょうか。

長編の三作目ということですから質が落ちるのは仕方がないと思います。
前二作がすごすぎた、ということもありますが
話の構成上の問題もあるかなと思いました。

「容疑者X」も「聖女」も犯人がわかっていて
その手口などを解き明かすという物語です。
それに対して「真夏の方程式」はミステリーとしては
オーソドックスな犯人を当てるという物語です。
驚かせるというのが難しいのは当然かもしれません。

犯人にスポットが当たる前二作と違い
容疑者探しでは複数のキャラクターに視点が分散しますし。

物語を読ませる力はさすが東野圭吾さんです。
ミステリー小説であることに重きを置かなければ
十分に面白い作品ですから人気があるのは不思議ではありません。
ミステリー小説にこだわりのない人が読めば
絶対に面白いですし、文句のつけようがないかもしれません。
でも、推理小説とミステリー小説を明確に区分したがるなど
ミステリーにこだわりを持つ東野さんですから
やはりミステリー小説である「ガリレオ」なら
ミステリーの部分にももっと驚きが欲しかったです。

また、ミステリーであることを抜きにして
物語としての面白さだけを見ても、
実は犯人が殺人にいたってしまう「動機」や
捜査する鑑識班のやけに「力不足」な点、
その「解決」で良かったのかというモヤモヤ感など
東野圭吾作品としては疑問があったりもします。

誰もが納得するわけではない賛否両論ある結末にすることで
読者にも考えてもらうというラストとしては
東野圭吾さんの「レイクサイド」はよく出来てると思いますが、
「真夏の方程式」の方は賛否両論が出てくるというよりは
ちょっと考えると「それはどうなんだろう」と思ってしまうラストですし。

やはり映画にするなら一作目の「容疑者Xの献身」に
ミステリーとしての驚きも物語の面白さも負けていない
「聖女の救済」をお願いしたかったです。

なぜ「真夏の方程式」なんでしょうか。
環境と資源開発の対立を描いているからでしょうか。
湯川と「子ども」の関わりを通して人物造形を深めているからでしょうか。
船のシーンがあって映像にスケール感が出るという理由でしょうか。

「真夏の方程式」のオーソドックスな犯人当ては
テレビドラマ版での二時間スペシャルに似合いそうですから
映画は「聖女の救済」、ドラマ版のスペシャルで「真夏の方程式」として欲しかったです。

これだけたくさん書いていての「真夏の方程式」ですから
このレベルを保っているだけでも本当はすごいのですが、
東野圭吾さんにはどうしても贅沢な期待をしてしまいます。

ついでに書きますが「真夏の方程式」には
「容疑者Xの献身」の事件を経験したということが
湯川学の行動に影響している部分があるので
直接の関わりはないですが先に「容疑者X」を読むべきだと思います。
そして「容疑者Xの献身」を読んだ後には
同等の面白さを持つ「聖女の救済」を読んでいただきたいです。
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泥舟、一応は映画の方も観に行くかも。