ヒトツ
その後のお師匠様は少し落ち着きを取り戻したようだった。
車椅子に座っているが、体の体制を整える力も無くなってしまったようで、ズレ落ちる体を引き上げて欲しいとわたしに何度か言ってきた。
そして、お師匠様は若い時分の仕事の話しをしたり、これから先の未来に実現したい仕事の話しをした。
脳に転移した腫瘍の影響か、話しの内容は支離滅裂であった。
何を話してるか解らない時もあった。
しかし、普段は余計なおしゃべりをしないお師匠様。
必死に自分の仕事のノウハウをドラさんに伝えようとしているは明らかであった。
ドラさんはお師匠様と真っ正面に向き合い、
発するそのひとつひとつの言葉を丁寧に復唱してみせた。
そうする事で
「俺達の意思は通じ合っているよ」と、お師匠様に伝えていた。
お師匠様にもそれが伝わったのか、時折充実をした表情で頷いていた。
今まで仕事で気持ちを交わす事が出来なかっ た二人からは想像もできない光景。
二人の気持ちがこんなにもヒトツになるのは初めてかめしれない…。
わたしは胸がギュッと苦しくなった。
胸の奥底から沸々とした熱い気持ちが込み上げてきた。
我慢が出来ず涙がでた。
車椅子に座っているが、体の体制を整える力も無くなってしまったようで、ズレ落ちる体を引き上げて欲しいとわたしに何度か言ってきた。
そして、お師匠様は若い時分の仕事の話しをしたり、これから先の未来に実現したい仕事の話しをした。
脳に転移した腫瘍の影響か、話しの内容は支離滅裂であった。
何を話してるか解らない時もあった。
しかし、普段は余計なおしゃべりをしないお師匠様。
必死に自分の仕事のノウハウをドラさんに伝えようとしているは明らかであった。
ドラさんはお師匠様と真っ正面に向き合い、
発するそのひとつひとつの言葉を丁寧に復唱してみせた。
そうする事で
「俺達の意思は通じ合っているよ」と、お師匠様に伝えていた。
お師匠様にもそれが伝わったのか、時折充実をした表情で頷いていた。
今まで仕事で気持ちを交わす事が出来なかっ た二人からは想像もできない光景。
二人の気持ちがこんなにもヒトツになるのは初めてかめしれない…。
わたしは胸がギュッと苦しくなった。
胸の奥底から沸々とした熱い気持ちが込み上げてきた。
我慢が出来ず涙がでた。
ドラさん
エレベーターを降りて、ナースセンターへ。
お師匠様の部屋の場所を聞くと「あれ~、今談話室にいるょ~」と教えてくれた。
談話室に向かう廊下の途中で、お師匠様が大きな事で話しているのが聞こえてきた。よく聞き取れないが何か怒っているようだった。
ドキドキして談話室に入ると、胸を激しく揺さぶる光景が目に飛び込んできた。
車椅子に紐で縛りつけられ、「ほどけ!ほどけっていってんだろぅバカヤロウ!!」と怒りながら大きな声で怒鳴り散らすお師匠様。
そして…………
「すいません、騒がしくしてしまい、ほんとすいません。」
……と周囲の人に必死に謝り続けるドラさん。
わたしは気持ちの落ち着き処が見つからないまま、ドラさんに駆け寄った。
「ドラさん、お師匠様…」
「脳に転移した腫瘍が悪化してるって…もぅ意識は正常には戻らないって……」
「えっ………………
でもついこないだまでは全然そんな事……」
「とにかくもぅ俺の事も解らなくなるのも時間の問題だって……」
ドラさんは震える声をごまかすように答え、そして、次にわたしが発する言葉を遮るように、周囲を見渡し見知らぬ人達にこう告げた。
「すいません。痛いんです。痛みがひどくて感情が抑えられないんです。騒がしくしてしまい、ほんとにすいません。」
わたしはギュッて唇を噛み締めて、
紐をほどけと叫びちらすお師匠様の手を握った。
出来るだけ優しく、出来るだけ温かく、出来るだけ包みこむように…
そして元気に笑顔でこう言った。
「お師匠様、地元へ帰ってこれましたね!!おかえりなさい!!」
お師匠様はポカンとした顔でわたしを見上げた。
そして思いだしたように
「あぁ…帰ってきたぞ。後は家に帰るだけだな…」とボソッと答えた。
お師匠様の部屋の場所を聞くと「あれ~、今談話室にいるょ~」と教えてくれた。
談話室に向かう廊下の途中で、お師匠様が大きな事で話しているのが聞こえてきた。よく聞き取れないが何か怒っているようだった。
ドキドキして談話室に入ると、胸を激しく揺さぶる光景が目に飛び込んできた。
車椅子に紐で縛りつけられ、「ほどけ!ほどけっていってんだろぅバカヤロウ!!」と怒りながら大きな声で怒鳴り散らすお師匠様。
そして…………
「すいません、騒がしくしてしまい、ほんとすいません。」
……と周囲の人に必死に謝り続けるドラさん。
わたしは気持ちの落ち着き処が見つからないまま、ドラさんに駆け寄った。
「ドラさん、お師匠様…」
「脳に転移した腫瘍が悪化してるって…もぅ意識は正常には戻らないって……」
「えっ………………
でもついこないだまでは全然そんな事……」
「とにかくもぅ俺の事も解らなくなるのも時間の問題だって……」
ドラさんは震える声をごまかすように答え、そして、次にわたしが発する言葉を遮るように、周囲を見渡し見知らぬ人達にこう告げた。
「すいません。痛いんです。痛みがひどくて感情が抑えられないんです。騒がしくしてしまい、ほんとにすいません。」
わたしはギュッて唇を噛み締めて、
紐をほどけと叫びちらすお師匠様の手を握った。
出来るだけ優しく、出来るだけ温かく、出来るだけ包みこむように…
そして元気に笑顔でこう言った。
「お師匠様、地元へ帰ってこれましたね!!おかえりなさい!!」
お師匠様はポカンとした顔でわたしを見上げた。
そして思いだしたように
「あぁ…帰ってきたぞ。後は家に帰るだけだな…」とボソッと答えた。
