ゴマみたいな小さな蜘蛛が、

 

洗面所の窓際(室内)に、貧相な巣を張った。

 

そんなところで餌は掛からない。

 

数日後に干乾びて終わりだろうと思っていた目の前で、

 

彼の10倍位の大きさの羽虫が入り込んで、

 

突如、白い糸との格闘が始まった。

 

かつて、外で巣にかかった蝉を助けようとして手を出し、

 

蜘蛛のエサを奪った挙句、

 

糸にまみれた蝉の方も助けられなかったことがあり、

 

自然界の弱肉強食に手を加えないよう決めていた。

 

爺にも捕らないように言い置いて見守った。

 

 

少し後に様子を見ると、

 

動かなくなった羽虫に小さな蜘蛛が近づいていた。

 

蜘蛛はエサを食べるのではなく、体液を吸うと聞いたことがある。

 

彼にとって何日分の食料だろう。

 

 

しかし数時間後、蜘蛛の何倍もあった羽虫が姿を消していた。

 

あの状態から飛んで行ったとは思えないが、

 

蜘蛛が全部食べたとも思えない。

 

他の虫が奪う環境にもなく、

 

なんとなく薄気味悪い気持ちだけが残った。

 

 

特にオチはない。

 

嫌な読後感を残すミステリー小説を、

 

「イヤミス」と呼ぶらしいが、このくらいはたいしたことないだろうか。