気まぐれに、前月より10日ほど早く、かかりつけ医に行った爺。
仕事から帰った私に、
「オレ、嘘ついちまった…」と話し始めた。
*
カルテを見た先生に、
「いつもより早いですが、調子悪いところありましたか?」
と問われて、
なぜだか分からないが、とっさにこう答えたらしい。
「ちょっと来週は出掛ける用があったもんで」
普通はそれで、「そうですか」で済むと思う。
が、そこはヒマな地域に根差した町医者。
「あら、どちらに?」と質問を重ねてきた。
「北海道に」(なんでだよ!)
「向こうもこれから良い気候でしょうから、
楽しみですねぇ…」
「いや、法事なんです」(なんでだよ!)
「あーそうでしたか。新幹線で?」
「いえ、飛行機で!」(ハイ回答の方が楽でしょうに!)
*
よくもまぁこんなにペラペラと呆れる。
自ら楽しそうに報告しているから、
認知症などによる虚言ではないようだが、
一度ウソをつくと、またウソを重ねることになる。
飛行機は、出張のため調べたが、
往復で7万円もするのだ。
わざわざ法事で、85才が行くだろうか?
金銭的にも体力的にもご遠慮いただきたい。
医者はそこまで考えないとは思うが、
来月、覚えていて「どうでした?」とか聞かれた場合の、
模範解答を用意しておきたい。